ジム・ロジャーズ「これからも円安は止まらない」 渡邉美樹氏「昔の1ドル=360円時代に戻る」
ロジャーズ氏もこの6倍という数字は非常に重要で、日本人だけではなく、世界の多くの人が知るべきだと強調します。
日本銀行は4月にマイナス金利の解除に踏み切りましたが、仮に世界の標準的な金利が3%前後だとしたら、日本では今もなお歴史的に異常な低金利政策が続いています。ロジャーズ氏は、少子化と増大し続ける債務問題という問題の根っこを解決させないまま先送りし続けていると、いずれ市場が主導権を取り、制裁を与えると言います。
確かに、今は政府には豊富な外貨準備高があります。しかし、為替介入は円安の速度を緩やかにさせる時間稼ぎの効果くらいしかなく、「投げる球」(原資)が少なくなれば、その効果も限定されます。
ロジャーズ氏は、為替市場はわれわれの暮らしに何が起きているのかを示すわかりやすい指標の1つとして非常に価値があると言います。また、お金をたくさん刷れば、必ずインフレになって、通貨の価値が下がると何度も強調します。実際に2023年の日本のインフレ率は3.2%台になっており、不動産や株高の恩恵を受けない国民の生活は厳しさを増しています。
余力がある間に、外貨を稼ぐ手段を真剣に考えるべき
「円安は悪いことばかりではありません。円安で儲かる企業もあるからです。短期的には日本に恩恵をもたらし、株価も一時的に上がるでしょう。しかし、長期的に見ると、プラスにはなりません。これまで自国の通貨を安くして成功した国を見たことはありません。今後も円安が続くなら私はみなさんに『早く国を出なさい』と伝えなければなりません」
ロジャーズ氏は家族でシンガポールに住んでいます。筆者も9年間シンガポールで生活をしていますが、移住してきたときの為替レートと比べると、シンガポールドルが円に対して約1.5倍になりました。逆に言えば、1万円でほぼ120シンガポールドル受け取れたのが、今は80シンガポールドルしか受け取れなくなりました。金(GOLD)も含め、ほとんどすべての通貨に対して日本円は急激に弱くなってしまっています。
今、海外在住の日本人は、日々円の目減りに悩まされており、四苦八苦しながら現地通貨を稼ぐ手段を考えたり、円の目減り分以上に収入を増やそうと努力しています。
しかし、逆に言えば、その苦労のお陰で、海外旅行に行って円安でびっくり仰天ということもなく、日々自らに負荷をかけながらビジネスを継続させています。ワタミも海外事業を拡大中で、シンガポールの店舗は現地の方々でたいへん賑わっています。多くの企業も個人も、余力がある間に、外貨を稼ぐ手段を真剣に考えるべきでしょう。
日本は今後もエネルギーなどを輸入する必要があり、円安はやはりよいとは言えません。日本の株式や不動産は円ベースでは上昇しているかもしれませんが、対米ドルや対GOLDではどうかなど、さまざまな比較基準で円の立ち位置を考え直すべきでしょう。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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