「まぶた欠損」1歳息子をYouTube配信、両親の決断 「おもちくん」のただただ幸せな日常を流す意味

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「僕はまだはっきりしないことは考えても仕方ないと考える性格なんですが、彼女の場合は知ることで安心するんです。夜通し病気のことを調べて落ち込んでいることはわかっていたので、それを僕の前で吐き出してもらいました。そうすれば前に進める人なので。それに、お腹の子は“親ガチャ”に成功しているから大丈夫だって思ったんです。こんなに素晴らしい女性とめちゃくちゃポジティブな僕のもとに生まれてくるんだから」(孝輔さん)

1歳になった未来くんの食事の様子。口から少量の味見をしつつ、大部分は胃ろうで注入している(写真:YouTube「星のミライChannel」より)

“人とは違う”。それも障がいという形の差異だとしたら、ポジティブになれる人は多くないだろう。自分のことでも不安なのに、わが子がそうだったら。どれだけ厳しい世界に置かれてしまうのか心配で、人目に触れることをためらう親もいるかもしれない。

ところが、孝輔さんの発案で2人はYouTubeで未来くんの姿を多くの人に見てもらうことを選択した。現在アップされている動画の再生数は、数十万から多いもので300万回を超えている。

「最初はYouTubeでの発信には慎重だったんです」としほさん。

「妊娠中に異常がわかってからブログで発信していましたが、それは何度も推敲を重ねて言葉を慎重に選ぶことができるから。でも動画だと情報量が多くて、どんなふうに伝わるのかが未知数でした。考えが変わったのは、夫と何度も話し合いを重ねたことと、あとはプロレスラーの本間朋晃さんのお話を知ったことがきっかけでした」(しほさん)

独特のガサガサ声で話す新日本プロレスの本間氏は、試合中の怪我が原因で声が出しにくくなってしまったという。しかし、テレビ番組でその声を使って笑いをとったところ一躍人気者に。「あえてハンデを見せて人に愛されるようになった本間さんを見て、おもちくんにもそういう可能性があるかもしれないと思いました」としほさんは言う。

「使えるものは使ったらいいじゃん」

現に、障がいのある子の日常を発信する親は少なくない。パリコレクションの舞台に立った19歳のダウン症のモデル・菜桜さんや、背骨が湾曲する側弯症を患い、その矯正手術によって胸から下がまひしてしまった7歳のりおなさんなど、SNSやYouTubeでファンを獲得し、メディアにも多く取り上げられる人気者も出てきている。

障がいの有無を抜きにしても魅力的な彼女たちが、人々から支持される姿に勇気をもらう人も多いだろう。しかし、「親が子を売りものにしている」「本当に本人がやりたくて発信しているのか」というようにバッシングする人もいるのが現実だ。

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