倍率77倍!中国で過熱する「公務員人気」の実情 海外への渡航も制限、それでも目指す理由とは
月収は約1万元(約20万円)と、民営の大手企業に比べると見劣りする。政府は2人目、3人目の出産を奨励するが、そこまでのゆとりはないと考えている。
ただ、安定が保障されていることを思えば収入に大きな不満はない。より不満なのは習近平政権下で公務員の規律が厳しくなり、海外旅行に自由に行けないことだという。職場の規定で海外旅行は年に3回までと定められ、パスポートは職場に預けなければならない。
「香港とマカオは目と鼻の先だが、海外旅行とみなされるのでそんな近場で貴重な1回を消費したくない。公務員になってからは一度も行っていない」
制限の多いつまらない生活だと思うこともあるが、安定した仕事、子ども、家を手に入れられた。「私の学力だと、10年遅く生まれていたらこうはいかなかった。運がよかった」としみじみ思う。
2024年採用は303万人が出願
中国の公務員や国有企業の職はその安定ぶりから「鉄の茶碗(鉄飯椀)」と称される。職を得るにはコネも必要とされ、公務員に「公僕」というより「上級国民」のイメージを持つ庶民も多い。
2020年以降、政府の規制などで大規模な新卒採用を行っていた不動産産業、教育産業、IT産業の景況感が大幅に悪化し、リストラを断行した。
中国国家統計局によると昨年6月の若者(16歳から24歳)の失業率は過去最高の21.3%に達した。若者の安定志向はより強まり、国家公務員試験の応募者は増加の一途をたどっている。
2009年に出願者数が初めて100万人を超え、2023年採用では3万7100人の募集に対して、約259万人が応募した。今年11月末に行われた2024年採用の試験には303万人超が出願し、初めて300万人を突破した。予定採用人数は3万9600人なので、77倍の狭き門となった。
2024年採用で最も競争率が高い職種は、国家統計局寧夏調査総隊の業務処室一級主任科員で、募集1人に対し3572人が応募した。応募できるのは「修士以上」となっている。
学部卒で就職せず大学院に進学して学歴に箔をつける動きも顕著になり、呼応するように公立学校の教師の高学歴化も加速する。
2019年秋、深圳の高校に新卒で赴任する教員リストがSNSで拡散し、20人全員が修士以上の学歴で、うち19人は国内最高峰の清華大学、北京大学出身であることが大きな話題を呼んだ。就職難だけが背景ではなく、学校の評判を高めたい高校側が、大学教員並みの好待遇を用意して高学歴人材を招聘したようだ。
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