ホテルが「中国人団体客はいらない」と言い切る訳 「処理水問題」よりも深刻な宿泊施設のある事情
意外にも、ホテル側の受け止めはいたって冷静だ。
「受け入れ態勢ができていないので、いま中国人団体観光客に来られても困る」と、名門ホテルの幹部は胸をなでおろす。他のホテルも異口同音に「中国人客のキャンセルなどによる影響はほとんどない」と語る。
実際、インバウンドを集客できる都内のホテルの経営状況はコロナから急回復している。藤田観光が運営する1000室以上の大型ホテル「新宿ワシントンホテル」の客室単価・稼働率は現在、コロナ禍前を上回っている。
中国本土からの需要は回復していないものの、家族やグループでの宿泊が多いほかの国からのインバウンド客が増えたことで、宿泊人数が増加し客室単価の上昇につながっているのだ。
客室清掃や調理の人手不足は深刻
ホテル各社がコロナ禍で推し進めてきたある戦略も「処理水問題」の影響緩和に大きく関係している。
それは、稼働率重視から客室単価重視への転換だ。ホテルはこれまで稼働率を高く保つため、多少単価を安くても客室を販売してきた。しかし、コロナ禍を経てホテル各社は稼働率を落としてでも、客室単価を引き上げる戦略に切り替えている。
背景にあるのは空前の人手不足だ。とくに客室清掃や調理の人手不足は深刻で、コロナ禍前ほどの稼働を維持できなくなっている。
また単価重視の販売は経営の改善にもつながる。客室を多く稼働させる場合はリネンやアメニティの交換、清掃などのコストがかかるが、客室単価を上げればそうした費用は抑えられ収益性が向上する。
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