弱ってきた老母を放っておけず23年ぶりに「同居」 40代後半~50代の娘と母の「闘いの日々」

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実家に戻ると母はいままで以上に同じ話を繰り返す。一日中テレビを大音量でつけ、日にちの感覚がなくなってきた。「お母さん一人で怖い」と弱々しく言うかと思えば、ものすごい剣幕で怒りをあらわにされ、10代のころの地獄のバトルが蘇る。「また母と顔をつきあわせなければならないのか! っていうか、この先どうなるの?!」

だが、筆者だけではなかった。周囲を見回すと同じ状況にある同世代がゴロゴロいた。40代後半~50代の娘たちがいま、かつて格闘した母に呼び戻されている。

親の愛情を求めて「いい子」を演じ続けた

通訳者の女性(54)は2020年のコロナ禍に23年ぶりに実家に戻り、母(81)との同居を決めた。3年前に父が他界、次いで夫の急逝という悲劇を経ての決断だったが、母との関係には紆余曲折があったという。

「昔から母には娘に対する理想像があったんです。小1の出来事は忘れられません。私は公立小に通ったのですが、母は近くの私立小学校の黒いランドセルが素敵だと私に黒のランドセルを買い与えたんです。ほかの女の子たちは赤色で、当然のようにいじめられた。でも、母には言えませんでした」

兄も女性も親の愛情を求めて「いい子」を演じ続けた。が、父の言うままにエリートコースを歩んだ兄は社会人になって爆発し、うつ病を発症。自身も大学時代に摂食障害を患った。ようやく自由を得たのは結婚してからだ。以降、実家とは距離を置いてきた。だが、父亡き後の家で料理もせず、物忘れが目立つようになった母を放っておけなかった。いまようやく母との関係のコツをつかんできたという。

「『いい子』を演じるのをやめたんです。家でも母と距離を置き、衝突しそうになったら外出するなどしています」

漫画家の松本英子さん(54)は4年前、23年ぶりに実家に戻り、母(82)と猫と暮らし始めた。コミックエッセイ『初老の娘と老母と老猫 再同居物語(1)』にその日々がリアルかつユーモラスに描かれている。松本さんは言う。

「母とはわかり合えないと思っていました。母は昔から自分のルールや美学がある人で、私や2人の兄にもそれを押しつけてくるんです。完璧主義者で何事もきっちりした母からすると、だらしなく見える子どもたちが心配だったのだと思います。感情の喜怒哀楽が激しく、常に嵐の中にいるようでした」

松本さんは子どものころはそんな母を受け止め、従っていた。やはり「いい子」を演じていたのだ。だが23歳のときに「崩壊した」。

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