弱ってきた老母を放っておけず23年ぶりに「同居」 40代後半~50代の娘と母の「闘いの日々」

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「母の主張に反発したとき、言われたんです。『あなた、変わったわ』。しかも当時付き合っていた元夫のせいだと言われて、大荒れの末に理解し合うことを諦めました」

まさか実家に帰ることになるとは

その数年後に父が他界。松本さんは結婚を機に家を出て、以降は年に数回実家に顔を出す程度だった。その後、離婚を経験し、40代まではシングルライフを謳歌していた。まさか実家に帰るとは思ってもいなかったという。

「ここ数年、母は『これからどうなるんだろう』と弱気なことを言い出していたんです。心臓の病気で入院をしてからは心身が目に見えて衰えてきた。このまま一人にしておくと火事を起こしたり、詐欺に引っかかったりするかもしれないと心配になって」

帰ろうかな、という気持ちはじりじりと少しずつ砂が崩れていくようにやってきたという。「私、帰ってくるよ」と言ったとき、ニコッとした母の顔は忘れられない。

だが、実際に帰ってみると闘いが待っていた。野菜の切り方から洗ったお皿の置き方まで「それはこうするのよ!」と直されてイラッとする。「私のやり方があるの!」と声を荒らげたいのを我慢して、ひとり部屋でクッションをたたきつけて叫ぶこともある。今後は不安だらけだが、「とりあえず、今はなんとかうまくいっている」という。

「80代と50代。お互い年齢を重ねて気力も体力もパワーダウンしていたタイミングもよかったのかもしれません。49歳までだったら帰れなかったと思います。まだまだ仕事もがんばらなきゃ、という思いもありましたから」

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2023年7月31日号より抜粋

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