TISが「AI・データ分析」を用いたビジネスに強い訳 「PoC疲れ」を起こさず課題解決につなげる秘訣


AIの活用によって適切に効果を創出するには
AIをビジネスでうまく活用するにはどうしたらいいのか。TIS ビジネスイノベーションユニット データアナリティクスビジネス 部長の正木俊輔氏は、「AIありきで考えると失敗する」とアドバイスする。

データアナリティクスビジネス 部長
正木俊輔氏
「ITシステムは、導入ありきではなく、課題に対してあるべき形を定義していくものです。AIも同様で、場合によってはRPAやマクロといった技術のほうが適している場合もあります。業務上の課題を見極め、AIの必要性を判断しなくてはなりません」
しかし、それができている企業は残念ながら少ない。2020年8月にTISインテックグループの一員となったAI・データ分析のプロフェッショナル集団、澪標(みおつくし)アナリティクス 代表取締役社長の井原渉氏はこう話す。
「まず目立つのが、『AIを使う』がゴールになってしまっているケースです。課題解決のためにAIを使うべきなのに、AI活用が目的化してしまっています。また、課題は見えているけれども、AIで何ができるかわからずにうまく進められないケースもあります。そして、最近増えているのが、課題が見えていて適切にAIを活用できているけれども、運用保守ができていないケースです」

代表取締役社長
井原渉氏
AIの運用保守とは聞き慣れないが、井原氏は必須だと断言する。
「人工知能が学習を続けるのはメリットでもある一方、デメリットでもあるのです。学習に伴走して保守しないと、AIは暴走してしまうおそれがあります。例えば『リンゴは白い』と学習させ続けると、『リンゴは何色か』との問いに白と答える事態が発生します」
加えて、適切な保守をしないとデータの変質にも気づきにくい。例えば、コロナ禍1年目と今ではマスクの売り上げが大きく違うが、チューニングをしないとAIはその理由を理解できない。つまり、「導入して終わり」にすると、単なる不具合だけでなく、誤った予測や回答を出すシステムになってしまう可能性があるのだ。
「大切なのは、『AIも人間と同じように間違える』という前提に立つことです。そのうえで、AIが今どのように運用されているかを適切に管理していかなくてはなりません」
5000件超の実績で培ったAI・データ分析のノウハウ
AI活用を目的化せず、ビジネスの課題に合わせて導入し、適切に運用保守をしていく。この一連の流れをカバーするのは決して簡単ではない。井原氏はこう続ける。
「なぜなら、AIはそれだけでビジネスに活用できるものではないからです。基本的には、システムに組み込まれなければなりません」
そうすると、澪標アナリティクスのようなAI・データ分析を専業にしている会社だけではなく、システム全体に関して理解のある会社と共同で推進することが成功に向けた重要なポイントとなる。
澪標アナリティクスが、SIerとして豊富な実績を誇るTISインテックグループの一員となった理由はここにある。TISはコンサルティングからシステムの開発・運用・保守までできるので、AIアルゴリズムの開発ができる澪標アナリティクスと一体となることで、AIプロジェクトをワンストップで推進できるのだ。AI・データ分析の重要性をいち早く認識していたTISにとっても、澪標アナリティクスは非常に重要なパートナーだった。

「アルゴリズムの開発には、どうしてもアカデミックな知見が必要です。最新の理論もつねにキャッチアップする必要があります。かなりとがった分野ですから、TISだけでカバーするのは困難でした。一方で、TISには多数のお客様がいて、その課題を解決するご提案と実装を得意としています。先進的な知見を持ち、これまで5000件以上のプロジェクト経験を誇る澪標アナリティクスとの提携は、AI・データ分析を活用したビジネス支援に欠かせないと考えました」
そう語るTISの正木氏は、「ずば抜けて多い実績と最新の知見を持つ澪標アナリティクスは非常に重要なパートナーになっています」と話す。
「『こんなことをやったらどうなる』といった漠然とした問い合わせに対しても、ほとんどの場合『似たようなことをやったことがある』と回答するのには驚かされます。お客様のAI活用における非常に幅広い課題に対して対応案を提示することができ、そういう企業とパートナーシップを組めるのは非常に心強いですね」
AIの活用を加速させ、社会を支える存在に
AI活用の“ビジネス診断”から最適なソリューションの導入まで対応できるTISと澪標アナリティクス。いわゆる「PoC(概念実証)疲れ」の対策にも独自の工夫を凝らしている。
「大きく3つあります。1つ目は、事前にPoCの目的を定義することです。このプロセスを踏むことで、AI活用の目的化も防げます。2つ目は、事前にAIの使い方を細かく決めないということです。検証の結果、精度が低いと『この使い方はできない』との結論になってしまい、例えばリコメンドには使えなかったけれどコンプライアンス管理には使えるなどといった、本来価値が発揮できたはずの分野を見逃してしまいかねません。3つ目は、MVP(Minimum Viable Product)開発を行い、『いきなり本番システムに組み込まない』ことです。これは、『PoCで出てきたものは、PoC環境で動いたもの』という認識に基づいており、本番に近い形で価値検証を行うMVP開発を行うことで、早期に価値の見定めを行い、システム開発のスピード・費用の両面を適切にコントロールすることができます」
すべてのPoCがビジネス実装につながるわけではないことを踏まえると、5000件以上の経験を積んできたからこその実践的なノウハウが生きていることがわかる。
「たとえビジネス実装に直結しなくても、必ず次へつなげられるように心がけています。その意味でも、TISインテックグループへの参画は有効に機能しています。PoCの結論でよくあるのがデータ不足ですが、どうやってデータを取りまとめるかといったコンサルティングや、AI学習データを作成するサービスを展開するグループ会社を通じた新たな提案など、幅広い支援につなげることができています」(井原氏)
そうした両社提携のシナジーが発揮されたソリューションの1つが「予測型経営DXサービス」だ。AIによる将来予測を基に意思決定を支援し、経営の高度化を促す。例えば、従来は個々の製品ごとのベテラン人材が勘と経験で計画を立案していたために、製品ごとの在庫量にバラつきがあった製造業のお客様も、本ソリューションの活用により全社で適正在庫に近づけることができ、コストの最適化だけでなく環境負荷も軽減したという。

「今後、労働力人口の減少は避けられない中で、AIの活用は社会を支えていくための解決策の1つになると確信しています。AIによる自動化は、人手不足の領域で最も貢献できますので、今こそしっかりと社会実装し、本格的な第4次産業革命の実現を後押ししたいです」(正木氏)
だからこそ、あらゆる企業の悩みに応えたいと両氏は口をそろえる。
「AIやデータ分析は、『課題を明確化しておかないと相談しても適切な支援が得られない』と考えるお客様が多いです。でも私たちには、ぜひ“ふわっとした状態”でご相談いただきたいと思っています。課題を見つけてビジネスに実装し、成果を上げるところまで伴走しますので、お気軽にお声がけください」
