先端的サービスの実装に向けた取り組みを紹介! スーパーシティ・デジタル田園健康特区
01
つくばスーパーサイエンスシティの取り組み
――リアルメタバースと連携したレベル4のドローン物流
本調査事業では、複数台のドローンと地上の自動配送ロボットを組み合わせ、様々な目的に応じた物流サービスの実現可能性を検証している。特に、複数台のドローンの同時運航は、国内ではまだ社会実装に至っていない。ドローンの運航管理システムの開発を進め、高度な遠隔制御を可能とすることで、2022年12月に解禁となった「有人地帯における補助なし目視外飛行」(レベル4飛行)によるドローン物流がより一層進展する。今後は、ドローンと自動配送ロボットを、荷物の重さや距離、配送場所に応じて使い分け、多様なニーズに対応できる配送サービスの構築を目指していく。また、現実空間とバーチャルコンテンツを重ね合わせるリアルメタバースにより、ドローンの飛行経路「空の道」を可視化し、ドローン物流に対する住民の理解向上も図っていく。
――交通弱者のラストワンマイル対策としてのパーソナルモビリティを活用した移動サービス
遠隔監視型の小型パーソナルモビリティを活用し、高齢者など移動手段に制約のある方向けにラストワンマイル(自宅から最寄りの交通機関までの移動手段)の確保を目指す取り組みだ。調査事業では、つくば市内にパーソナルモビリティの乗降場所を3箇所設置して、バス停までの送迎を行い、利便性と安全性が両立する適正な通行速度などを検証している。ロボットの位置情報とリアルタイムな天気情報を連携した遠隔管制を用いた実証を行い、安心安全な移動の実現に向けた取り組みが進められている。
02
万博を見据えた大阪府・大阪市の取り組み
――空飛ぶクルマの大阪ベイエリア航路実現性の調査
本調査事業では、大阪・関西万博の会場となる夢洲を含む大阪ベイエリアにおいて、空飛ぶクルマの実現に向けた、離発着ポートや飛行経路の実現性の検証や課題調査等を実施している。離発着ポート候補地の現地調査や、航路周辺の建築物や風況・電波等といった物理的制約の調査等を行い、将来的にポート候補地となり得る場所の選定が進められている。
また、各ポート候補地を結ぶ最適な航路設定とそれに伴う制度上の課題抽出も行う。課題抽出には、大阪ベイエリアで事業を検討する民間企業10社及び自治体等が連携・協力して取り組んでいる。各分野のプロが参集することで、企業単体ではできない調査が可能となり、特に制度の整備においては機体メーカー、運航業者等、多くの視点で網羅的な抽出が行われ、空飛ぶクルマの社会実装に向けた規制改革事項の整理が進められている。今後も、新しい日常的な移動手段の実現に向けて官民連携で取り組んでいく。
――「コモングラウンド構想」の早期実現に向けたプラットフォームの構築
「コモングラウンド」とは、建築や都市の3Dデータを基盤に、空間に存在するあらゆる情報をデジタル記述し、フィジカル空間とサイバー空間をリアルタイムかつシームレスにつなぐ空間情報プラットフォームである。本調査事業では、遠隔でも同じ空間にいるかのような集団コミュニケーションを可能とするために必要となるセンシング技術及び通信技術の性能や連携手法を調査した上で、複数拠点・複数人のオンライン同時接続による没入型体験環境の試適用を行っている。また、現在十分に議論されていないメタバース上での人の骨格・モーションデータの取り扱いと個人情報との関連についても調査している。今後の社会実装に向けて、複数のコモングラウンド・プラットフォーム拠点を構築・連携し、次世代型リモート没入環境の導入による価値及び課題について、技術面、運用面、規制面のそれぞれの視点から検証していくことが必要となる。
03
3市町連携、デジタル田園健康特区の取り組み
――健康医療情報の自治体を超えたデータ連携の実現
本調査事業では、デジタル母子健康手帳、PHRサービス、IoTデバイス等のデジタル田園健康特区の先端的サービスで活用される健康医療データを対象として、データエクスチェンジ機能によりデータを標準規格(HL7 FHIR)へ変換するなど、データ連携の実現に向けた実証を行っている。これにより業種・事業規模を問わないデータ交換を低コストで実現するとともに、これまでは把握が難しかった生活習慣等の情報も活用可能になる。なお、現在、健康医療情報は自治体、医療機関等に分散管理され、異なるデータ形式やIDを持つため、個人の生涯データとしての統合が困難だ。デジタル田園健康特区では、この問題の解決のため、被保険者番号等の利用によるデータの紐づけ活用にも取り組んでいる。
将来的には、日本全国の地域間でデータを蓄積・活用できるよう、デジタル田園健康特区の3つの市町が先行して、自治体を超えたデータ連携の実現を目指していく。
――救急救命士によるエコー検査の実施等に向けた技術的検証
本調査事業は、医療のタスクシフトに向けた取り組みだ。ドクターカー内で救急救命士が実施した検査・処置の情報や、車内カメラ映像で得られた患者情報等を搬送先の医師へリアルタイムに伝送することで、医師が救急救命士へ適切に指示できるかを実証し、その有効性等を技術的に検証している。
調査事業にて医療DXによる救急救命処置の有効性を示しつつ、法令面で、救急救命士によるエコー検査を可能とする等の規制改革を行うことで、救急救命士の処置の範囲が拡大し、医療機関到着後の医師の診断や治療の早期化、効率化が実現できる。今後は、先端的な装備を内装した救急車の整備や、救急救命士への教育システムの構築、搬送プロトコルの整理にも取り組み、医療のタスクシフトの実現を目指す。
今後も、2030年頃に実現される未来社会の先行実現に向けて、先端的サービスの実装に向けた取り組みを、より一層進めていく。