トランプは中間選挙後「オワコン」になったのか 「元トロツキストの保守思想家」も予言した構造

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耳慣れない言葉である。冷戦後の欧米社会は、この思想に基づくエリート集団の支配階級と、彼らに支配される労働者階級に分断されている。数に優る労働者階級には宗教、地域、人種、民族などでさまざまな亀裂があり、政治的に分裂している。最大の亀裂は古くからの住民と新たな移民による、仕事と公共サービスの奪い合いだ、という。

大量に流入する合法・違法の移民は、支配階級が低賃金で利用するのに好都合だ。旧住民は彼らに対峙させられる。エリートによる分断統治である。反発すれば、エリート側にいるメディア権力によって「排外主義者」のレッテルを貼られる。移民問題などアメリカで左右対立とみられる事象は、主流メディアも含む支配階級が上下の分断を覆い隠す偽装ではないか、という主張には大いに肯ける面がある。

元トロツキストの保守思想家が予言していた

本書が描く、新自由主義によるテクノクラート支配の世界構造出現を1940年代から予言していたのは、著者も言及する元トロツキストの保守思想家ジェームズ・バーナム(1905〜87年)だ。トランプ現象以降、偽装的な左右対立を超えて問題解決に取り組もうとする著者のような知識人によって、バーナムが見直されている。

本書によれば、テクノクラート新自由主義による「上からの革命」が起きたのは、先進国の産業構造が大きく変わりだした70年代からだ。新自由主義と、それに反発して起きたポピュリズムを乗り越える道は、それ以前の先進国資本主義が戦時体制などを経てつくりあげた「民主的多元主義」だと著者は主張する。

労働組合を再興し、宗教団体や市民団体などとともに政策決定の仕組みに参加させる。一種の共同体主義と読める。新自由主義を個人主義のいきすぎた形態とみれば、共同体主義の主張が伸張してくるのは当然かもしれない。

会田 弘継 ジャーナリスト・思想史家

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あいだ・ひろつぐ / Hirotsugu Aida

1951年生まれ。東京外国語大学英米語科卒業。共同通信社ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任。その後、青山学院大学教授、関西大学客員教授を務め現在に至る。著書に『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)など。訳書にフランシス・フクヤマ『政治の衰退』(講談社)など。

 

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