イェール大学のダン・カハンは、アメリカ人の政治的見解と気候変動に関する考え方を調査した。予想どおり、この2つには高い相関関係があった。
「近年の地球温暖化の主な原因が、化石燃料の燃焼などの人間活動であることを示す確かな証拠がある」といった考えに同意する割合は、リベラルな民主党支持者のほうが、保守的な共和党支持者よりも高かった。結果自体は、特に意外なものではない。
この研究のポイントは、対象者の「科学的知性」を測定していたことにある。
測定に用いられた質問の内容は「機械5台を5分間稼働させると、製品を5個製造できる。機械100台で製品を100個製造する場合に必要な所要時間はどれくらいか」といった思考力を問うものもあれば、科学的な基礎知識を問う「レーザーは音波を集中させることで機能している。本当か嘘か?」「地球の大気の大部分を占める気体は、水素、窒素、二酸化炭素、酸素のうちどれか?」といったものもあった。
IQが高い人は数学や投資先の検討が得意
科学的知性が高い人たちは、科学的な問題について似たような意見を持つ――。そう考えるのが自然だが、この調査が明らかにしたのはその反対だった。
対象者のうち科学的知性が最低レベルだった層では、リベラル派か保守派かによる意見の違いは見られず、どちらも約33%が「地球温暖化の原因は人為的なものである」と信じていた。ところが、科学的知性が高まるにつれ、リベラル派と保守派の間で意見が分かれていった。
科学的知性が最高レベルの層になると、「地球温暖化の原因が人為的だ」と信じる人の割合はリベラル派がほぼ100%に達したのに対し、保守派では20%にまで低下した。
つまり、知識が増えれば増えるほど、人々の意見は分かれていった。科学的知性が高くなるほど、政治的信条の違いに応じて意見が二極化されていったのである。
この研究結果には、重大な意味がある。知性が高く、あるテーマに詳しいことが、「自分の考えは正しい」という誤った確信につながってしまうと示唆されるからだ。
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