犯罪者の金を吸い込んだ「トランプ物件」の実態 汚い金が大統領選資金へと変わるカラクリ
その人物はアメリカの高級不動産市場をやがて支配し、アメリカのリアリティー番組を席巻し、ついにはこの国の政治の頂点に立つことになる。その署名の人物こそドナルド・トランプであり、「トランプ・タワー」の1室を、西半球がこれまでに経験したことのない極悪非道な独裁者の1人に売ることを決めた。
1983年のその日――トランプがホワイトハウス入りを果たし、アメリカの反クレプトクラシー政策とともに、この国の民主主義の軌跡を覆してしまう数十年前のその日、トランプは彼にとって最初の泥棒政治家となる人間をこの国に上陸させていた。
そしてそれは、トランプにとって最後となるものではなかった。
トランプの財務歴の全容を明らかにするには何年もの時間がかかるだろうし、場合によっては何十年にも及ぶかもしれない。だが、大統領に就任する以前の時点で、国内にある不動産に限っても、トランプが何十億ドルもの資金洗浄に関係していたのは明らかである。
もっとも広範囲に行われた調査によると、トランプが所有していた1300戸以上の物件が、過去にマネーロンダリングに手を染めていた人物に販売されていた。1300という販売戸数は、トランプが所有する物件の5分の1以上に相当する。
汚い金がトランプを潤す
買い手はペーパーカンパニーもしくは現金払いで購入した個人で、匿名が守られていた。しかも多くがまとめ買いで、最終的な受益者の身元は明らかにされていない(今日においてさえ、アメリカでは守秘制度が維持されているため、トランプの物件の最終的な所有者のうち、身元が公表されているのはごく1部にすぎない)。このような怪しげな売買にともなう最終的な請求額は、15億ドルという啞然とする金額に達する。しかも、この数字はインフレ調整前の当時の金額である。
トランプが所有する物件はどれも、過去数十年にわたり、アメリカに流入してきた汚い金の大洪水のおこぼれにあずかってきたと考えられている。たとえば、ニューヨークの「トランプ・タワー」を、汚い金をきれいに洗う自分専用のコインランドリーと見なしていたのはデュヴァリエ1人ではない。タワーの総販売戸数の4分の1近くが、デュヴァリエのようにマネーロンダリングの前歴に該当する購入者で占められていた。その販売総額は3000万ドルにも及んでいる。
1996年、トランプはマンハッタンのウエストサイドに「トランプ・インターナショナル・ホテル・アンド・タワー」を建設した。コロンバスサークルとセントラルパークの南西部という申し分のない立地で、トランプにとってはもっとも重要な資産のひとつでもある。このビルの総販売戸数の30パーセント近くの買い手がマネーロンダリングの経歴に適合しており、売買総額は1億3500万ドルだった。
「トランプ・ワールド・タワー」はどうか。トランプがマンハッタンに建設した最新のビルの1棟だ。イーストリバーを見下ろすマンハッタン島の東の境界線に建っており、オープンは2001年、それまでトランプと彼の物件をひいきにしてきた買い手のなかでも、とくに上客を優先して販売された。ビルの約10パーセントはそのような匿名の購入者によって占められていた。彼らはアメリカがまちがいなく提供してくれるクレプトクラット向けの洗浄法を利用したいと願う者たちで、こうした相手に売った販売総額は1億1000万ドルにも達していた。
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