日本の企業社会も変わった。
日本製鉄が1月21日、ワイヤロープ国内最大手の東京製綱にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。TOB価格は前日終値に36.5%のプレミアムをつけた1500円で、出資比率を現在の9.9%から19.9%まで高める計画だ。
これだけ聞くとそれほど珍しくは思えない。政策保有株式(持ち合い)解消という世の中の流れに逆行しているうえ、出資比率も中途半端な印象を受ける。
しかし、日鉄の発表資料を見るとがぜん景色が変わってくる。東京製綱の業績・財務の悪化、ガバナンス体制の不備などを指摘し、現経営方針では企業価値が毀損し続けると訴える。さらに企業価値の回復・向上には、経営体制の再構築が必要と述べているのだ。
2017年以降、日鉄が大株主、事業パートナーとして継続的に経営陣に経営改善を促してきたが、危機意識もなく改善されなかったため、17年からは、株主総会で取締役の選任議案に反対票を投じてきたと赤裸々に明かしている。
昨年9月下旬からコミットメントを高めるために株式の追加取得の検討を開始。TOBについて「事前協議は行っていない」(日鉄)。東京製綱は「何らの連絡もなく一方的かつ突然に行われたもの」と反発を隠さない。本稿執筆時点では東京製綱はTOBへの意見表明をしていないが、これまでの経緯を考えれば限りなく敵対的である。
日鉄出身会長を切れるか
日鉄の前身である富士製鐵が東京製綱に出資したのは1970年。近年は7.07%保有する筆頭株主(信託口を除く)であり、田中重人会長ほか歴代の取締役には日鉄出身者が少なくない。その田中会長こそが企業価値を毀損する元凶だと日鉄は主張。業績不振にもかかわらず、約20年間代表取締役にとどまる「会長の退任は必須」(日鉄)と公然と批判する。
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