[Profile]Geir Lundestad ノルウェー・ノーベル研究所の所長およびノーベル委員会の事務局長として、1990年から2014年までの25年間在任。歴史学の教授として、主に冷戦期の米国と西ヨーロッパの関係に焦点を当てた研究を行っている。
カール・フォン・オシエツキーの名前を知っている人が今、どれほどいるだろうか。彼は1935年にノーベル平和賞を受賞したドイツのジャーナリストで、当時のヒトラー政権が受賞に猛反発したことで知られる。ノーベル平和賞の選定理由は時に物議を醸す。激しい議論を呼ぶのは、この賞の注目度の高さの裏返しでもあるだろう。
1901年に創設されたノーベル平和賞は「世界で最も栄誉ある賞」といわれる。毎年10月初旬にノルウェー・ノーベル委員会が発表する名前には世界の注目が集まる。
だが、考えてみると不思議な話ではないか。毎年の受賞者を決めるのは、私たちが名前も知らないわずか5人のノルウェー人委員なのだ。にもかかわらず、ひとたび受賞者の名前が発表されるや、時には歴史を動かすようなインパクトをもたらす。ノルウェーは人口が世界の0.1%にも満たない国だが、ノーベル平和賞によってその規模からは想像できないほどの国際的影響力を持っているのである。
著者は90年から2014年まで25年間にわたりノーベル研究所所長とノーベル委員会事務局長を務めた。受賞者を決定する瞬間に居合わせただけでなく、受賞者と連絡を取る役割も担っていた。委員会はどのように受賞者を選んでいるのか。受賞者たちはどんな人物だったか。また、委員会への政治的圧力などはないのか。ノーベル平和賞の舞台裏を語るのにこれほどふさわしい人物はいないだろう。
著者の在任中、最も激しい論争を巻き起こしたのは、09年のバラク・オバマ氏への授賞だった。大統領の座に就いてわずか9カ月での受賞に、米国内からネガティブな反応が起きたのだ。「オバマはまだ何も成し遂げていない」という批判である。
この記事は会員限定です
残り 822文字
