6月8日の朝。東京・山谷地区の外れに位置する「ハローワーク上野 玉姫労働出張所」周辺は、明け方から久しぶりに活気づいていた。コロナ禍で2カ月にわたり休止していた日雇い労働者向けの「特別就労対策事業」がこの日から再開されたからだ。
仕事を求める山谷の住人たちは午前5時半すぎから集まり始め、顔見知り同士が「生きてたか」「まいったよ」と言葉を交わす。出張所のシャッターが開く同6時半には、人の輪は幾重にも広がり、200人近くに膨れ上がった。労働者を仕事場へ運ぶマイクロバスも近くの路上に連なって停車している。
通称「輪番」と呼ばれる特別就労対策事業は、山谷地区の住人らを対象とした東京都の公共事業だ。公園や霊園の草むしりやゴミ掃除などを登録者に輪番で紹介し、日払いで7500円以上になる。民間の求人がほとんどない中、通常なら月に3〜4回巡ってくる「輪番」の仕事を唯一の収入源とするホームレスも少なくない。
この日、一番乗りで開所を待った70代の男性は「ドヤ(簡易宿泊所)の金を払うと、生活保護費はいくらも残らない」と話し、「この2カ月は大変だった。3畳1間にずっといると、頭もおかしくなる」と続けた。近くの公園でテント暮らしという60代の男性は「輪番だけが頼りだから、再開してくれるのはありがたい。休止中はアルミ缶集めをしていた」と言う。
山谷地区で150人を数えるホームレスにとって「命の綱」の特別就労対策事業はしかし、緊急事態宣言が解除された今もコロナ禍から抜け出せていない。3月までなら、玉姫出張所など3カ所の「寄せ場」で毎日約250人を雇用していたが、マイクロバスの車内や職場での「密」を避けるため、都は求人定員を半減させたからだ。さらに7月10日から8月末までは熱中症対策のため仕事は午前のみで、手取りは3800円前後になる。
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