新型コロナウイルスの感染が広がる中、スウェーデンは都市封鎖(ロックダウン)を拒んだ。社会活動を維持する異例の決断は国内だけでなく、国外からも一部で称賛されている。だがこのような政策の下で新型コロナによるスウェーデンの死亡率は、あの米国をも抜いて世界最悪の水準に達した。
首都ストックホルムのバーやレストランは客であふれ、学校やジムも開いている。当局は公衆衛生上の注意を呼びかけてはいるが、罰則を伴う措置はなきに等しい。マスクの着用を促す公的なガイドラインも存在しない。
政府や多くの評論家は当初、こうした手法を「スウェーデンモデル」と呼んで自賛していた。ロベーン首相が強調したのが、「自律」を重んじる国民性だ。政府が指示しなくとも、国民が主体的に責任ある行動を取ると期待したのである。ある社会学者の言葉を借りれば「スウェーデン人は皆、自分の肩に警察官を乗せている」。だが、スウェーデン人の美徳なるものは後付けの理屈にすぎない。
実は、感染症対策の核心部分はたった1人の人物によって動かされてきた。政府の疫学責任者、アンデシュ・テグネル氏である。同氏は国外から流入した感染者を追跡すれば、それで感染の拡大は十分に抑え込めると考えていた。
2月下旬に北イタリアのスキー旅行から何千という家族が帰国したとき、通勤・通学の再開が認められたのはこのためだ。家族が感染したとしても、本人に明確な症状がない限り自宅待機は不要との立場である。テグネル氏は、国内で感染が広がっている地域が確認されていない以上、大規模な対策は必要ないと主張した。国内スキー場も、イタリアの教訓を無視して営業を続けた。この間、政府が率先して動くことはなかった。テグネル氏が一手に対策を担ってくれれば、政府の責任を軽くするのに都合がよかったからだ。
この記事は有料会員限定です
残り 659文字
