いりやま・あきえ●慶応大学経済学部卒、同大学院経済学研究科修士課程修了。2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院で博士号(経営学)取得。(撮影:尾形文繁)
慶応大学出身で、早稲田大学で教授を務めている。その立場と経営学者としての知見からすると、早慶ともに興味深い個性がある。
慶応義塾は、三田会という優れた仕組みで日本を支えてきた。経営学には人脈に関する「弱い結びつきの強さ理論」という有名な考え方がある。同理論では「人脈は緩く弱いほうがいい」とされ、緩い人脈こそが普段手に入らない情報を幅広くもたらすことがわかっている。今の日本に求められている事業革新(イノベーション)は「既存の知と知との新しい組み合わせ」から生まれる。したがって、緩いつながりで幅広い知を組み合わせることが不可欠だ。
その意味で三田会は、「緩いつながり」のネットワークをつくる環境そのものだ。三田会を通じての緩いつながりが日本のビジネスに変化をもたらす一助になってきただろうし、今後も期待したい。
早稲田も稲門会という組織があるが、慶応ほど卒業生の結びつきが強くない。最近は「WASEDA稲門経済人の集い」などで早稲田人脈をつくり始めているが、さらに進めるべきだ。
一方で、慶応モデルは今後の時代に合わなくなっていく可能性もある。三田会のような塾員同士の結束を強める「ステータス主義」が、これまでの日本社会では成り立ってきた。OB同士のつながりで安定した企業への就職や出世に有利に働いている。慶応という門をくぐることで得られる利益は、安定していた時代の日本経済、企業における勝ちパターンの縮図だった。
今は変革が必要な時代。これまでの時代に合った安定したモデルを構築しているがゆえに、今後は慶応の弱みが際立つ可能性がある。とくに慶応でも(本部のある)三田は旧来型の組織の代表格だろう。
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