読み返したい!『エルサレムのアイヒマン【新版】』
歴史上、まれに見る悪事を犯した者が、悪魔や怪物ではなく、ただ規則に従い、自分の頭で考えることなく仕事をこなしただけの人間だったとしたら──。『エルサレムのアイヒマン』は、われわれが「悪」について巡らす想像を裏切るような事実を突きつける。
アイヒマンはナチス親衛隊のユダヤ人移送局長官として数百万人のユダヤ人を強制収容所に送り、後にアルゼンチンでイスラエルの諜報機関に拘束されてエルサレムで裁判にかけられた。
自らもユダヤ人であった政治学者のアーレントは、志願して裁判を傍聴するが、そこであまりに凡庸な「悪」を発見し、本書を執筆する。そこにいたのはユダヤ人を憎悪する狂人ではなく、命令に従うだけのごく凡庸な人間であった。あたかも、上司の指示どおりにまじめに不正を実行した不祥事会社の社員のように。
アーレントは、ナチスに協力したユダヤ人の存在やエルサレムでの裁判の正当性にも言及し、ユダヤ人社会から苛烈な非難を浴びる。こうした事実も含め、本書は人間にとってあまりに重い記録であり、アーレントが本書で問う、人間が人間でいるために思考し続けることの価値は、なかなか表現することが難しい。
ポピュリズムや権威主義が跋扈(ばっこ)する現代においてこそ、思考し続けることの意味を反すうしたい。
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