読み返したい!『道徳感情論』
「市場主義の始祖」というスミスへの評価は一面的だ。
確かに『国富論』で、人々の利己心が発揮され、「見えざる手」の下、分業と資本蓄積が進み、社会が繁栄すると論じた。が、その17年前の『道徳感情論』では、人間には他者の感情を自分の心に写し取り、それと同じ感情を自分の中に引き起こそうとする「共感」の能力があり、それが社会の秩序と繁栄につながるとも論じていた。
スミスは、現在の経済学や政治学が前提とする合理的選択論の枠組みだけで人間を捉えてはいなかった。
スミスの共感の概念は、財政健全化にも役立つのではないかと、一部の経済学者が注目している。財政健全化が進まない理由は、健全化のメリットを享受するのが将来世代で、現役世代は健全化の過程で負担を甘受するだけと考えられ、世代間の協調が働かないからである。共感の作用を利用して、将来世代への利他性を促す仕組みを導入すれば、財政健全化も可能になるかもしれない。
スミスは富や地位の追求のむなしさも指摘している。よき人生とは何か、長い休みに改めて考えてみたい。
おすすめ『雇用、利子および貨幣の一般理論(上、下)』
マクロ経済学は、大恐慌に対応すべく、ケインズが始めた学問である。『雇用、利子および貨幣の一般理論』の最大の功績は、一国の所得水準の決定理論を構築したことにある。その理論が経済学の教科書に採用される際、「期待」や「資産市場」の役割が抜け落ちて理論的弱点とされたが、それは教科書の責任だ。ケインズ自身は、資産市場における期待や不確実性がマクロ経済に大きく影響することを強調していた。
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