【著者プロフィル】まつおか・まさひろ/フロンティア・マネジメント代表取締役。10年以上、流通業界の証券アナリストとして活動。2003年に産業再生機構に入社し、カネボウとダイエーの再生計画を担当。07年から現職。『宅配がなくなる日』(共著、日本経済新聞出版社)など著書多数。
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」。このダーウィンの名言を、若いビジネスパーソンへのメッセージとして援用する経営者は多い。
感じ方は人それぞれだと思うが、個人的にはサイエンスの理論を曲解し、都合よくビジネスに利用しようとする姿勢に違和感を覚えてしまう。
人間が自らの意志だけによって、自分たちの思う方向へ人体を進化させてきたというなら話は別だ。しかし自然淘汰における突然変異という概念や、適切な時期に適切な場所にいたことによる幸運という要素が、そこからはすっぽりと抜け落ちている。
本書の著者は、このような現象を「経営文学」と名付け、痛烈に批判する。経営学とは本来は社会科学の領域に属するはずのものだ。しかし、欧米などから輸入された経営論のスローガンが情念的な言葉の衣をまとい、意訳・誤訳されたまま流布するというケースは驚くほど多い。さらにメディアでもてはやされて、経営のパラダイムを支配してしまうのだ。
その最たるものが、平成という30年間にわたり蔓延し続けた「持たざる経営」や「選択と集中」というスローガンだと本書にはある。企業経営という視点から平成という時代を総括し、新しい時代を作っていくための示唆に富んだ1冊である。
平成の30年間は、減量経営の時代であった。1989年に始まった平成と同時に日本経済のバブルは頂点に達し、その後、崩壊した。この減量経営の空気感を肯定し続けたのが、本書に登場する「持たざる経営」や「選択と集中」というキーワードである。
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