【著者プロフィル】Christian Davenport/米ワシントン・ポスト紙の記者を務め、近年は金融デスクとして宇宙・防衛産業を担当。外傷性脳損傷の退役軍人を扱った作品でピーボディ賞を受賞しているほか、所属する取材チームはピュリッツァー賞の最終候補に3度選ばれている。
アポロ計画から50年ほどたった今、宇宙開発は明らかに停滞している。
アポロ11号の月面着陸ミッション当時のNASA管制室スタッフの平均年齢は26歳。恐れ知らずの若者たちが活躍する活気ある組織であった。しかし、今の平均年齢は50歳ほどで、リスクを避けようとする傾向が強く、官僚気質の組織へと変貌している。
加えて、ロッキード・マーティンとボーイングの2社が政府からの受注を独占、技術革新は停滞し、複雑怪奇な契約システムにより、開発コストが異常なほど高くなっている。それが宇宙開発の停滞している原因だという。
このような状況に業を煮やした大富豪が2人いた。1人は電子決済システム「ペイパル」で富を築いたイーロン・マスク、もう1人はネット通販会社「Amazon」の創設者ジェフ・ベゾスだ。
本書は急速に発展する民間による宇宙産業の姿を、2人の富豪に焦点を絞って描く。
マスクとベゾス。同じロケット開発にしのぎを削る2人の性格はまるで違う。
マスクは時に傲慢とも思える自信家で、自身の信念のためならば周りとの軋轢(あつれき)も厭(いと)わない。設立したスペースX社のモットーは「突き進め、限界を打ち破れ」だ。
その言葉のとおりにマスクは行動した。新規企業の参入を拒むNASAや空軍、ロッキード・マーティン、ボーイングに対し、SNSを使ったお得意のパフォーマンスとビッグマウスで攻撃を加える。世間の耳目が集まると法廷闘争を展開し、軍産複合体による参入障壁に穴を開けていく。当初は実力もないのにキャンキャン吠(ほ)える「子犬」だと馬鹿にしていたが、大企業幹部は度重なるロケットの打ち上げ成功と激しい政治攻勢に焦りを見せ始める。
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