訪日客需要増を追い風に、着実な成長を遂げている化粧品業界。だが30年を振り返ると小売り側の変化への対応など順風満帆とはいえない時代もあった。コーセー名誉会長・小林保清氏に平成の化粧品業界を回顧してもらった。
「インバウンドの盛り上がりは正直、驚きだ」
平成を振り返る前に、戦後の話を少ししたい。戦後に入り資本の自由化が日本に押し寄せてきた。化粧品業界でも門戸が開放され、外資メーカーが続々と参入してきた。売り場をどうにか取られないようにするため、われわれ化粧品メーカーは百貨店のみならず化粧品専門店でも売り場を確保するようになった。さらに美容部員を化粧品専門店に派遣し始めた。それが結果としてうまく生き延びる策になったと思う。
だが平成に入り小売りも大きく変化した。1997年の化粧品の再販制度の撤廃はその1つ。欧米の場合、高級化粧品は乱売されることがなかったが、当時の日本では乱売された。ただ、粗利の高い化粧品は本来、売り手にとっても利益を出しやすいもの。そのため小売りも激しい乱売が起きないように変化した。
チャネルに沿ってブランドを分け始めたのもこの頃だ。どの業態や店舗でも同じ品ぞろえにするのではなく、百貨店やドラッグストアで売っている化粧品を差別化した。これにはコーセーが提携していた仏ロレアルがその形を取っていて、刺激を受けた部分もある。
ドラッグストアが台頭する
再販制度が崩れ、今度はドラッグストアが台頭し始めた。個人経営が大半の化粧品専門店とは商売の仕方がまるで違う。ドラッグストアは本部集権型で、全店に美容部員を派遣することもできない。われわれはこうした変化に対応する教育を営業部員にするのが遅かったと思う。
ここ数年は、化粧品業界では中国人を中心としたインバウンドが盛り上がっている。私が社長の頃は外国人が店に来てくれなくて、正直、今の状況には驚きだ。今まではアジアは欧米に負けていた。それでも国内で各社が競いながらいい基礎化粧品を作っていった。そこがいちばん認められたように思っている。ただメイド・イン・ジャパンがよくなり始めたら、今度は中国人にメイド・イン・チャイナが売れなくなってきた。買い手がいたので、昨年、現地の工場を売却した。
化粧品は安定していて、内容も大きく変わることはない。他方、医薬部外品で「シワを改善する」と書いてよい商材が出てきた。そういう医薬部外品はこれからも広がっていくだろう。またAIやデジタルの活用も今後は必須になってくる。それを、売るためだけではなく、管理も含めてどう使っていくのか、という話になるだろう。今後はそうした部分での競争も出てくると考える。
(聞き手・本誌:若泉もえな)






















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