私が池袋に勤めていたのは、銀行員だった1985年のことだ。外回りと呼ばれる取引先課担当だった私は、池袋西口にある銀行から毎朝、銀行かばんを抱えて、徒歩3分の駐車場にある営業用車両「スバルレックス」に乗るため、街中を歩いた。
池袋駅の北口は飲食店とソープランド、ラブホテルが軒を連ねるちょっと猥雑な雰囲気の街だった。夕方に営業を終えて車両を駐車場に止め、銀行に戻る頃には多くの飲食店が店を開けた。ストリップ小屋の踊り子が、店の入り口から銀行への道を急ぐ私に「おいでおいで」と、なまめかしく手を振っていた光景を今でも思い出す。
池袋は池袋駅を中心とした駅周辺部を指しており、「池袋」という名の街は存在しない。池袋駅はJR山手線・埼京線・湘南新宿ライン、東武東上線、西武池袋線、東京メトロ丸ノ内線・有楽町線・副都心線の8路線が乗り入れる、1日当たり乗降客数262万人を数える大ターミナル駅だ。この駅を囲むように、駅西口一帯の「西池袋」、東口のサンシャイン側の「東池袋」、豊島区役所がある「南池袋」に街が分かれている。
2014年、日本生産性本部が発足させた日本創成会議は、全国に896ある「消滅可能性のある自治体」の一つに、池袋が属する東京都豊島区を名指しした。東京23区の自治体でも消滅する可能性があるということで大きな話題となった。豊島区は空き家率が15.8%(13年)と、東京23区の平均11.1%を大きく上回り、都区部で最も空き家が多いといううれしくないレッテルも張られた。
こうした状況の背景には、池袋周辺のマンションが投資用の狭小ワンルームマンションばかりでファミリーが住めず、池袋周辺に適当な部屋がないので、単身者が結婚すると区外に脱出してしまうという悪循環が存在した。豊島区は04年、「狭小住戸共同住宅税」を導入。戸当たり面積30平方メートル未満のマンションを造る際、戸当たり50万円を徴税した。しかし、これだけでは効果は少なく、14年には一定規模以上のマンション新築の際、住戸面積を25平方メートル以上にするよう条例で定めた。事実上、投資用ワンルームマンションを造らせない措置に踏み切ったのだ。
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