米中貿易摩擦への懸念が高まれば株価は暴落、後退すれば続伸──。貿易摩擦は足元の株価を大きく動かす要因となっている。金融市場の今後の動向を探るには、貿易摩擦についてシナリオを想定しておくことが短期的には有益といえる。
シナリオは三つ想定できる。
第一は米中間のマイルドな関税の導入で、実現の確率は70%。トランプ米大統領の思惑は、中国国内市場に進出する際の強制的な技術移転をやめさせ、知的財産権保護に関する規則を厳密に順守させることにより、2国間の貿易不均衡を縮小することだ。一方、中国は自国市場へのアクセスの見返りに技術移転を義務づける措置の撤廃を決めるなど、国内市場の開放で譲歩を始めている。最終的には中国が穏やかに譲歩しながら貿易戦争を回避するというシナリオだ。
第二は貿易戦争になるというシナリオで、確率は20%。米国が多面的な関税引き上げと投資規制を導入し、中国がこれに報復、各国も対抗措置を取る。世界の貿易の拡大ペースが劇的に低下し、先行きは世界的な景気後退となる。
第三が新たな貿易協定の合意で、確率は10%。米国と中国が合意し、貿易不均衡の是正、知的財産問題、市場開放に関する目標を設定するというシナリオである。
このうち、世界経済にとっての脅威はいうまでもなく貿易戦争シナリオだ。各国が相互に関税を10%引き上げた場合、世界のGDP(国内総生産)を2.5%押し下げることになる。そうなれば、金融引き締めに政策を変更しつつある各国中央銀行の動きにも影響が出る。仮に関税引き上げが貿易戦争につながれば、生産が減少して物価が上昇する。だが、この物価上昇の場合、生産の落ち込みがインフレとインフレ期待を抑制するため、即座に各国中銀の利上げにはつながらず、様子見とならざるをえないだろう。具体的には、FRB(米国連邦準備制度理事会)の来年にかけての予想利上げ回数には減少圧力がかかるし、欧州ではECB(欧州中央銀行)の金融緩和終了時期と初回利上げ時期の観測が後ろ倒しとなるのではないか。
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