エコノミストに聞く2017年の日本経済予想
日経平均株価が大発会から6営業日連続の下落という史上初の事態でスタートした2016年。その後も、日本銀行によるマイナス金利政策の導入や英国の国民投票におけるEU(欧州連合)離脱決定、米国大統領選挙におけるトランプ氏の勝利など、想定外のイベントに見舞われた。
足元はトランプ次期大統領の打ち出した大型減税や財政拡大策を受けて、世界的にリスクオンの流れが台頭しているが、この状況は17年も継続するのか。新年の日本と世界の経済について、国内外の金融機関やシンクタンク10社のエコノミストに予想を聞いた(いずれも16年12月12日時点の回答)。
12月6〜12日にアンケート調査を実施。
調査にご協力いただいたエコノミストの方々
敬称略・五十音順:池田雄之輔(野村証券)/岩下真理(SMBCフレンド証券)/北岡智哉(みずほ証券)/熊谷亮丸(大和総研)/河野龍太郎(BNPパリバ証券)/斎藤太郎(ニッセイ基礎研究所)/嶋中雄二(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)/新家義貴(第一生命経済研究所)/野地 慎(SMBC日興証券)/牧野潤一(SMBC日興証券)/丸山義正(SMBC日興証券)/美和 卓(野村証券)/村嶋帰一(シティグループ証券)
(注)設問により回答者が7〜9人の場合あり
経済成長の見方は二分 日銀の物価目標は困難
まずは日本の経済成長率について。17年の実質GDP(国内総生産)成長率は1.0~1.2%を見込む声が多かった。ただ翌年以降については、さらに成長が加速していくという声と、勢いが鈍化するという声に回答が分かれた。

前者については、「19年10月の消費税率引き上げを想定しているが、引き上げ幅が小さいこと、軽減税率が導入されることから、前回よりも影響は小さく、東京五輪開催に伴う需要押し上げも期待できる」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏)という意見があった。後者については、「外部環境の好転に伴い、緩やかな回復が続く。ただし、円安の進展は輸出や設備投資を大きく押し上げる見込みが薄い一方、家計の実質所得を抑制するため、必ずしもプラスではない」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)との意見があった。

物価(生鮮食品を除くコア物価上昇率)は、年を追うごとに上昇率が高まる傾向が見られた。ただし、日銀が物価目標(2%)の達成時期として18年度ごろとの見通しを公表しているのに対し、エコノミストの意見の大勢はそれを下回るものだった。
海外経済の先行きについては、トランプ次期大統領の政策によって米国が好調を維持し、世界に対しても好影響を与えるとの予想が大勢を占めた。中国についても、「構造的過剰を抱え、厳しい状況が続くが、当局の断続的な景気刺激策により、底割れは回避される」(BNPパリバの河野氏)との見方があった。

足元で続いている世界的な長期金利上昇の流れは、17年の日米の金融政策に影響を及ぼすのか。

日銀の金融政策変更の内容・タイミングについては、さまざまな見方に分かれた。16年9月に導入した長期金利操作に関しては、「18年の春闘で賃金の伸びの高まりが確認されるまでは目標水準は据え置こう」(シティグループ証券の村嶋帰一氏)、「米金利に上昇圧力がかかっている間は現行政策を維持するだけで円安傾向を享受でき、国内のインフレ率回復にプラス効果が期待できることから、政策的には静観を決め込む」(野村証券の美和卓氏)など、現状の誘導目標値(ゼロ%程度)を据え置くとの意見が多かった。
一方、米国の金融政策については全員が17年中に2回の利上げを実施すると回答した。ただし、16年12月14日にFRB(米国連邦準備制度理事会)は17年中に3回の利上げを実施するのが適切との見通しに上方修正している。本アンケートの回答期間が12月12日までだったことには留意が必要だ。「17年後半以降はFRB執行部の交代が話題になるとみられ、利上げを阻む要因になる」(大和総研の熊谷亮丸氏)との声もあった。
ドル相場は現状レンジ ユーロは選挙で乱高下
日本の企業業績や物価上昇率にも影響を及ぼしうる為替の動きはどうか。ドル円相場については、17年末に1ドル=98円や128円という大胆な予測もあったが、大半のエコノミストが110〜120円のレンジと予想した。とはいえ、「輸出型製造業の不満を背景に、『ドル高は行きすぎ』といったトランプ氏の発言によってトランプショックが起きる可能性もある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の嶋中雄二氏)との意見もあった。

ユーロ円相場については、「欧州で選挙が多いことから、不安定な時期が多いと予想される」(SMBCフレンド証券の岩下真理氏)という声もあり、乱高下を予想する意見が少なくなかった。17年4月にはECB(欧州中央銀行)が資産買い入れを減額する予定で、これが円安ユーロ高に転じるきっかけとなるとの声も多かった。
17年は日本よりも欧米のほうが政治・経済イベントが多い年となりそうで、海外情勢にも要注目だ。
1月20日には米国でトランプ氏が大統領に就任する。アンケート結果は、同氏の就任は米国経済に対して少なくともマイナスにはならないというものだった。「トランプノミクスは供給サイドを重視している姿勢から、1980年代のレーガノミクスを彷彿させる」(SMBCフレンドの岩下氏)という意見の一方、「もともと完全雇用状態であるため、トレンドを大きく上回る成長は持続しない。18年中には金利上昇とドル高が総需要を抑制し、米国経済に変調をきたす」(BNPパリバの河野氏)との声もあった。

欧州情勢はどうか。英国のEU離脱については、移民の流入をある程度制限する一方、EU単一市場へのアクセスは継続しようとする「ソフトブレグジット」の方向に進むとの意見が大勢。オランダ、フランス、ドイツで実施される国政選挙で極右政党の政権が樹立されるかについては否定的な意見が多かった。仮に政権を掌握しても、「経済政策は成長促進的であろう。EU離脱ドミノになるとも限らない」(三菱UFJモルガン・スタンレーの嶋中氏)との意見があった。
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