INDEX
5月に開かれた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)。その席上、安倍晋三首相は各国首脳に「現状はリーマンショックの前に似ている」と訴えたとされる。その後、政府側が発言を否定したという報道もあり、真偽は不明だ。
いずれにしても6月1日の会見で安倍首相は「世界経済が大きなリスクに直面しているという認識を、伊勢志摩サミットに集まったリーダーたちと共有した」と述べ、消費増税の再延期を表明。その後、28兆円の経済対策を決めた。9月初めの主要20カ国・地域(G20)首脳会議でも、「世界経済への危機感を共有し、すべての政策対応を行っていく」と強調している。
裏付けはたった5枚の資料
伊勢志摩サミットでは、経済産業省出身の今井尚哉首相秘書官らが作成したとされる、計5枚の資料が配られた。コモディティ(エネルギー・食料・素材などの商品)価格の推移(下図)や新興国の経済指標、新興国への資金流入、今年度の主要国・地域の経済成長率の予測の推移。資料はいずれもリーマン前と状況が似ていると指摘する。

しかし商品価格はすでに今年に入り上昇に転じている。主要国の成長率が下方修正されることは珍しくない。足元で新興国経済が振るわないことは確かだが、それをもってリーマン級の金融危機が起こるという理屈にはならない。東京大学大学院経済学研究科の岩本康志教授は「これだけの資料でなぜリーマン前と似ているといえるのか。それほど世界経済の現状が深刻だとは思えない」と首をひねる。
この記事は有料会員限定です
残り 507文字
