英国ではメイ新首相が誕生したが、国民投票で有権者が選択したEU(欧州連合)離脱の後の姿はなかなか見えない。離脱を実行するには時間を要しそうだ。
離脱に向けては不明確な要素がいくつもある。一つは交渉を始める時期である。加盟国の離脱手続きを定めたEU基本条約(リスボン条約)50条によると、英国が通知してから2年以内に離脱手続きを完了させなければいけない。メイ新首相は今のところ、年内に交渉を始めるつもりはないと公言している。
二つ目は英国とEU加盟国間で、将来の貿易協定をどうまとめるかだ。英国は同50条に基づき、離脱交渉において「英国とEUの今後の関係に関する枠組みを考慮すべき」と訴えるだろう。しかしEU側は貿易協定について、英国の離脱後に協議に入ると主張している。
三つ目は交渉の目標をどこに置くかである。単一市場への完全なアクセスを求めるのか(ノルウェー型)、限定的なアクセスを求めるのか(スイス型)、あるいは低関税オプションを模索するか(カナダ型)。WTO(世界貿易機関)ルールに沿ってEU諸国と貿易する道もある。
不透明要因はまだ残る。労働者の移動の自由について、英国がEUとの貿易協定にどの程度盛り込むかも課題である。メイ新首相はすでに「移民を管理するルールを盛り込まない貿易協定は受け入れられない」と表明している。
諸々の状況を加味すると、英国の選択肢として有力なのは、ノルウェー型オプションを基に特別なセーフガード条項などを導入し、移民が急増した場合に制限できるようにすることだろう。しかし、こうした特別扱いをすれば、他のEU加盟国からも同様の要求が相次ぐ懸念がある。EU側の同意を引き出すのは容易ではないはずだ。
一方でEUの交渉スタンスも不透明である。欧州委員会や閣僚理事会など、どれが英国との交渉を主導するのかが定まっていない。ドイツのメルケル首相は交渉に際して、「欧州委員会に白紙委任するつもりはない」と公言している。来春以降にはフランス大統領選挙やドイツの総選挙が予定され、EUがその前に最終的な交渉スタンスを決められるのかという課題も横たわる。
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