米国と中国が、南シナ海で力をむき出しにして対峙している。経済面では相互依存を深める両国だが、世界が見守る中で互いに軍艦を出し、主張をぶつけ合い始めた。
旧ソ連の崩壊以来、米国との直接対決を避けるのが中国の基本戦略だった。「韜光養晦(とうこうようかい)(能力を隠して時機を待つ)」というトウ小平の遺訓を堅持して、経済成長を最優先にしてきたのだ。米国もその方針を受け入れ、中国が国際社会の「責任あるステークホルダー」になることを期待してきた。
ところが、経済発展で自信をつけた中国の行動は徐々に変化を始めた。東シナ海や南シナ海では、力による現状変更を試みて日本やベトナム、フィリピンなど周辺国との緊張を高めた。米国に対しても、サイバー攻撃や宇宙での衛星破壊実験などで脅威を与え始める。特に、南シナ海での岩礁埋め立てと軍事拠点化は、結果的に米国本土への核攻撃のリスクを高めるものとして米国は許容できないものだった(→関連記事へ)。
「ワシントンの中国に対する見方は、この半年でそれまでとはまったく変わった」(米国駐在の幹部自衛官)。米国における中国の擁護者だった経済界も、サイバー攻撃が企業にまで及んだことを知って態度を硬化させた。景気後退による中国への期待低下も働いたかもしれない。
早急な行動を求める国防総省を抑えてきたのはオバマ大統領だ。9月に中国の習近平国家主席が訪米した際に直談判に及んだが、習主席は折れなかった。事ここに及んで、オバマ大統領も実力行使を決断した。
米軍の狙いはこれ以上の軍事基地化をやめさせることだろう。そこで何らかの合意ができないかぎり、豪州など同盟国を巻き込んででも中国に圧力をかけ続ける可能性が高い。
米中が戦火を交える可能性は極めて低い。これは、あくまで相手の譲歩を得るために知恵を絞るチキンゲームなのだ。しかし、日本が何をするべきかを考える際は最悪のケースも想定しておくことが必要だ。
仮に米中が武力衝突すれば、中東からマラッカ海峡を経由して日本に至るシーレーン(海上交通路)は大打撃を受ける。そこまで行かずとも、将来的に南シナ海から米軍が排除されるようなことがあれば、原油調達から企業の物流網に至るまでを日本は中国に制されることになる。
米軍は以前から、南シナ海での警戒監視を自衛隊に担ってほしいと打診してきた。そうした役割分担を正面から求められたときにどうするのか。安保法制をめぐる議論でなおざりにしてきた宿題を、日本はあらためて突き付けられている。





















