10月22日の理事会で、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は、次回12月3日の理事会での追加緩和を事実上、宣言した。曰(いわ)く、「12月の理事会で金融緩和の程度を再検証。資産購入の規模、構成、期間を調整する」。ドラギ総裁は「ECBはあらゆる手段を検討する」とも発言し、その中には中銀預金利率の引き下げが含まれることも示唆した。
驚いたことにドラギ総裁は、「インフレの下振れリスクの一つは最近のユーロ高」と言及。昨春1ユーロ=1.4ドル台に迫ったユーロドルは今年3月にかけて1.05ドル前後へと大幅下落し、その後の戻りはまだ1.15ドルすら超えていないが、その小さなユーロ反発でさえ容認しないということのようだ。
ECBはユーロ安がまだ均衡に至っていないと判断しており、事実上、ユーロは下落し続ける必要があるとの考えを示したことになる。ドイツを中心に経常黒字拡大が目立つ経済圏の中央銀行としては異例で、かつ、露骨な通貨安誘導である。
実は、ドラギ総裁率いるECBが試みる、このような通貨安誘導策は米国の通貨戦略に真っ向から挑むものだ。
欧州に財政政策を促す
先月19日に発表された米国財務省の為替報告書(通常、4月と10月に年2回発表)は、過去半年でドル高が止まってきたこともあってか、前回(4月)の報告書に比べれば、随分と警戒的なトーンは落としていた。だが、為替報告書は冒頭部分で、「世界の経済成長が冴えないのは、これまで需要喚起策が金融緩和に限られてきたからだ。その間、財政政策は中立か、抑制的だった。財政支出で内需を力強く押し上げ、より強固で、均衡のとれた世界の経済成長に貢献しよう」と述べている。
この、経済対策として財政刺激策を重視する考えは、実はFRB(米国連邦準備制度理事会)の議長候補にも挙がったサマーズ元米財務長官の主張と重なる。9月のアンカラ会合で「金融政策のみでは均衡ある成長につながらない」と表明したG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)の基本方針も、おそらくこのあたりから出てきているのだろう。
財政政策を抑制したまま、金融緩和とユーロ安を目指そうとする欧州の方針が、こうした米国やG20の目指す方向性と相いれないことは明らかだ。その反撃策として、米国がより明確に、FRBの引き締め先送りの長期化を打ち出す事態になると、為替市場は米欧通貨戦争の様相を呈し始めよう。
興味深いことに、昨年まで米国財務省で国際担当次官を務めた後、FRBに横滑りしたブレイナード理事が先月、イエレン議長やフィッシャー副議長ら主流派に抗する格好で、確信犯的に、金融引き締めを先送りすべきとの主張をした。その際、理事は、海外での需要不足と米ドル高の問題に強い警戒感を表明した。こうした動きは気になるところである。
図は、消費者物価で見た購買力平価(1973年4月基準、独統計ベース)からの実際のユーロドルの乖離と、米独10年金利差を対比したもの。99年のユーロ導入直後の混乱期を除けば、両者の趨勢は一致している。
したがって、ECBが追加緩和に動き、欧州金利をさらに一段、低め誘導することに成功すれば、ユーロドルは今春の1.05ドル台の安値を割り込んで下落することもありえよう。ただし、それに対して、FRBが引き締め先送り姿勢を強め、米国金利の低下を促すことができれば、ユーロドルの下落には歯止めがかかることになる。この場合、円相場はドル安とユーロ安の狭間で思わぬ円高となるリスクが出てくるだろう。























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