安倍晋三首相は11月、消費再増税を先送りして解散・総選挙に打って出た。一般には「これで増税が1年半遅れるだけ」との受け止めが多いようだが、それは大きな誤解である。
もし消費税率10%が最終目的地ならば、そこにたどり着く時期が1年半遅れても、さしたる問題はない。しかし、周知のように欧州諸国の付加価値税率は20%台が普通だ。高齢化がはるかに深刻な日本で、10%の税率でやっていけるはずがないではないか。米国のように、公的医療保険さえ完備されない社会保障に満足するのでないかぎり、最終的には最低20~25%の消費税率が避けられないと多くの専門家は考えている。消費税率10%は、あくまで一つの通過点としてとらえる必要がある。
そのうえで、「中長期の経済財政に関する試算」(2014年7月内閣府公表)という資料を見てみよう。政府は20年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下PB)黒字化を公約としているのだが、この見通しによれば、15年10月に消費税率を10%にしても、20年度には11兆円弱のPB赤字が残るという。一見不可解な試算である。
だが、この資料にはもう一つ読み方がある。実は、1. アベノミクスの成長戦略が成功して実質2%、名目3%の成長が可能となる、2. 20年度までに消費税率を15%に引き上げる、という二つの条件を満たせば、PBの黒字化は可能だと読むこともできるのだ。実際、消費税率を10%から15%に引き上げれば、軽減税率などの低所得者対策を施しても、11兆円弱の赤字は十分に埋められる。
筆者はこれまで、潜在成長率がゼロ近傍まで低下している現状では、1. を前提とするのは無理があると指摘してきた。それでも、首相が「万難を排して、成長力を高めるための構造改革をやり抜く」と誓うのなら、「その意気やよし」である。
この記事は有料会員限定です
残り 740文字
