衆議院選最中の12月9日、安倍晋三首相がさいたま市の街頭演説で述べた一言は衝撃的だった。
「あのアップルが最先端の研究開発を日本ですることを決めた。アジアで最大級の研究開発拠点を日本に置く」
アベノミクスが引き起こした円安によって、雇用を伴う製造・研究開発拠点の国内回帰が起きている──。安倍首相はそう強調したかったようだが、製造業は本当に日本へ戻ってきているのだろうか。
経済産業省の工場立地動向調査を見るかぎり、国内の工場立地件数は増えていない。

増えているかのように見えるのは、固定価格買取制度の導入で急増した太陽光発電設備が含まれているせいだ。製造業の就業者数も減少続き。

冒頭のアップルの拠点も従業員数十人規模にとどまる。過去2年間の円安によって製造業が大挙して日本に回帰していると結論づけるのは、無理がある。
ただ、製造業が日本拠点を検討することへの期待感はある。三菱東京UFJ銀行経済調査室の鶴田零調査役は「海外に移した拠点を国内に戻すことは難しいだろうが、新規設備投資を日本で行う動きは広がっているのでは」と言う。
いずれも計画ベースだが、日本政策投資銀行の全国設備投資計画調査では、製造業の国内投資に対する海外投資の比率は2014年度計画で63.1%となり、10年度以降続いていた上昇傾向が一服。12月15日発表の日銀短観でも、14年度製造業の設備投資計画は前年度比12.2%増と、9月時点の11.8%増から上方修正された。
東レ経営研究所の増田貴司チーフエコノミストも、「大企業の国内立地戦略は円安でも変わらないという声が圧倒的。だが、15年と16年を見通すと、企業の立地戦略が変わるかもしれない」と言う。
企業は中期経営計画に基づいて投資計画を立てる。そのため、2年程度の円安では、まだ中計の修正に至っていない可能性がある。
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