人、企業、ビジネスを引き寄せる
つくばエリアのパワー
茨城県 つくばエクスプレス沿線地域
「知の集積」を加速させ、確実なものにしたのが、05年のTX開業だった。秋葉原駅とつくば駅を最速45分で結ぶ鉄道の開業により、都心からつくばエリアへのアクセスは飛躍的に向上し、つくばエリアから都内への通勤も以前とは比較にならないほど容易になった。
そのため都内からつくばエリアに移住する人が増えたばかりではなく、事業所を移転する企業も続出している。TXがあれば事業所を移しても都内から通勤可能なために、従業員を継続雇用できるからだ。こうして沿線8地区の人口は、TX開業前の10倍以上にも増えたのである。
こうした状況に県や市も積極的に対応してきた。茨城県は県有地を整備して住宅地とする一方で、商業・業務用地としても分譲している。都市再生機構(UR)などが分譲する分も含めると、つくばエリア内8地区で区画整理事業の対象となっている土地の総面積は約1700ヘクタールにも及び、駅に近い一等地もまだ残されている。首都圏でこれだけ広大な住宅・商業・業務用地が駅の近くに残されている例は、極めてまれだ。それだけでなく、区画整理地区内としては希少な工業地域も有しており、製造業などの地道にものづくりを続ける企業も進出している。その結果、つくばエリアでは「職住近接」というワークスタイルを実現することが可能となる。
大手企業に限らず中小企業もつくばエリアへの進出を積極的に検討しており、県では用地を分割したうえでの分譲など、面積に関しても柔軟に対応している。実際、最近は都内や他県から移転してくる中小企業も出始めた。企業の規模を問わず、税の軽減措置や奨励金などの優遇措置が用意されていることもこの流れの一因だろう。
つくば市の全公立学校が
すべて小中一貫教育に
教育環境や生活環境にも力を入れているのが、つくばエリアの特長だ。とりわけ目覚ましいのが教育環境の充実ぶりで、つくば市は12年度から全公立学校で小中一貫教育をスタートさせた。また、ICT(情報通信技術)スキルやグローバル人材としての資質を育むための「つくばスタイル科」という独自の授業も行っている。先に述べたように、つくばエリアは研究者やトップクラスの技術者が多く、教育熱心な家庭が多い。その影響もあって、小中学校の学力は全国でもトップクラスというのが定評だ。さらに、沿線の2地区において、近年中に小学校を建設する方針である。つくばみらい市でも小学校と中学校の連携を密にした、9年間を見通した教育を行っている。また、来年度から新たに陽光台小学校が開校するほか、今後さらに小学校を増設していく方針だ。