環境・CSRの未来戦略
CSRをめぐっては、「日本は欧米に比べ遅れている」とか、「これからはCSRではなくてCSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)の時代だ」という向きもあります。CSVとは、社会にとっての価値と企業にとっての価値を両立させ、企業の事業活動を通じて社会的な課題の解決を目指すことですが、これは近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」という三方よしに通じます。このような考え方を経営理念に取り入れている日本企業は、昔からかなり多く存在します。そう考えると、決して日本企業のCSRやCSVが欧米に遅れをとっていることはないし、企業側も襟を正して声高に「わが社のCSR活動は……」などと言わずに、自然体で行っていけるのではないかと思います。
疑問に答えるためにも
CSRの効果測定を
その一方で、大きな問題もあります。たとえば、自社の活動は表面的、形式的な取り組みに陥っているのではないか、特別視されることなく経営と一体化しているのだろうか、自分たちの取り組みが社会の課題解決に役に立っているのだろうか、といった自問をCSR担当者はつねに抱えています。また、株主の中にはCSR活動が企業価値を高めているのか懐疑的な人たちもいますし、社員の中にもCSRが社内の活力を高め、自分たちのモチベーションを上げることになっているのか確かな感触を持っていない人たちもいます。世間からは、CSR活動を行ったりCSR報告書を作ったりしてはいるけれども、中身はというと他社もやっているからという横並び思想で行っているだけではないかという目で見られたりもします。そして、こうしたさまざまなステークホルダーの問いが企業やCSR担当者へのプレッシャーになっているのです。