環境・CSRの未来戦略

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売り手と買い手だけでなく、世間にも利益となる商売こそがよい、と考えた近江商人。「三方よし」と表現されるこの理念は、企業の責務となりつつあるCSRや近年唱えられ始めたCSVにも通じ、この精神を社内に浸透させようとする動きも多い。未来を志向するために、今企業は何をすべきなのか。
※CSR(Corporate Social Responsibility)= 企業の社会的責任
 CSV(Creating Shared Value)= 共通価値の創造
伊藤 邦雄(いとう くにお)
一橋大学大学院商学研究科教授。中央省庁の各種委員を歴任し、今年8月には経済産業省が主導する「持続的成長への競争力とインセンティブ」プロジェクトの座長として「最終報告書(伊藤レポート)」をまとめた。複数の民間企業の社外取締役を兼務する

江戸時代からあった
「共通価値創造」の理念

この3年で、CSRに対する意識は経営者や担当者の間でかなり変化したという印象があります。たとえば、一定規模以上の企業であれば、そのほとんどがCSR担当部署・担当者を置いて、第三者意見も取り入れたCSR報告書を作成し公表していますし、CSRは外部に喧伝するものではないという隠匿性が薄れてきたようです。日本では善行はひそやかに行うべきという考えがありますが、そこから脱却し始めた。

また、CSRのとらえ方も変わってきたと感じます。CSRには三つのレイヤー(階層)があります。第一層は企業の根底をなすコンプライアンス(法令順守)、二層目はリスク対応や環境対応などの企業倫理、三層目は社会貢献です。この二層、三層については、これまで本業とは別次元のもの、あるいは努力目標という意識で、当初は勢いがあったものの次第にトーンダウンしたり、利益が出たらやるというような広告宣伝費扱いされたりすることがありました。しかし、ここ数年で企業は三層全体でCSRをとらえるようになってきたと思います。

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