国家と個人、双方の利益にかなっているか
重税が課されることもあったが、大規模な軍隊を組織するには必要なことだった。紀元前2世紀以降、税負担を軽減して退役兵と都市の貧困層に土地と財産を再分配する法案が提出されるようになっていた。
キケロは、貧困者の負担をやわらげることに反対はしなかったが、論文『義務について』のなかで、政治家があまりに感傷的になることは危険だとして警鐘を鳴らしている。
個人の権利を守る場合、その施策が国にとっても利益となるか、少なくとも害とならないことを必ず確認しなければならない。
ガイウス・グラックス(注1)は、民衆に向けて大量の穀物の再分配を始めたが、これは国庫を疲弊させる結果となった。
マルクス・オクタウィウス(注2)が貧民に食料を配給したときは、それよりも穏便なやり方で実施したので、国家としても管理可能であり、困窮者は助けられた。つまり、彼は両者の利益に貢献したことになる。
*(注2)紀元前133年の護民官。同僚のティベリウス・グラックスの改革案に反対し、罷免された。
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【国政を預かる者ならば】
