今年は株価上昇でも来年一時急落すると見るワケ 日経平均やNYダウの「高値と安値」はどうなる?

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したがって、市場は年内のテーパリング開始を織り込んでおり、連銀によるテーパリングスケジュールの公表(筆者は、おそらく11月のFOMCで、12月から開始する旨を発表すると予想)があっても、それで市場が揺れることにはなるまい。

しかしテーパリングについて、別のリスクがある。それは、実際に量的緩和を絞り始めると、これまで金融緩和の環境に堕してきた企業や投資家に動揺が広がり、それが経済や株式・債券市場などに大きな波乱を生じる、ということだ。

それは今年ではなく、テーパリングが一段と進む来年のリスクだろう。この点を詳細に述べる必要があるのはまだ少し先なので、当コラムでは今年のどこかで詳しく解説しよう。

2022年の「中国リスク」とは?

2つ目は「中国リスク」だ。括弧をつけて述べているのは、中国に関するさまざまなリスク、例えば同国の景気減速や株価下落への懸念、米中間の対立(人権問題や安全保障面)の激化、中国政府による突然の産業規制、同国企業のアメリカ上場に対する制限などなどだ。このリスクは過去の当コラムでかなり述べたので、繰り返しは避ける。

ただ、来年2月の北京冬季オリンピックを多くの国が参加する形で成功させたいと、今の中国政府は考えているだろう。とすれば、その前に中国から過激な行動には踏み出しにくいと見込む。

逆にいえば、そのあとは何が起こるか予想しがたい。この点で、「中国リスク」は短期も中期も長期もリスクであり続けると懸念するものの、今年以上に来年は警戒すべき展開となりうる。

こうして、今年より来年のほうが、2つのリスクが世界市場に大きくのしかかるとすれば、日米など主要国の株価は、来年は一時的に下振れしよう。NYダウ工業株指数は3万ドルに、日経平均は2万5000円に下押しするとの予想値を立てているが、これは単なるメドにすぎない。

それでも、それらの下値メドは、今年の上値メド(NYダウ工業株が3万7000ドル、日経平均が3万円超)から、せいぜい2割程度の反落にすぎず、よくある株価の下振れであって、うろたえるようなものではない。不幸にして筆者の見通しが的中し、述べたような株価の下押しがあれば、そこでは買いでよいだろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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