妻の姓を選んだ青野社長が説く「選択的夫婦別姓」 「だから現行の夫婦同姓の強制はおかしい」

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たとえば、給与明細は西端でもらい、重要な契約書は西端の名前でサインする。海外のホテルには、西端でなければ宿泊できない。法的に有効な姓は西端だけだからだ。選択的夫婦別姓を導入することができれば、本名を変えずに結婚できる。そうすれば、すべてが丸く収まる。

選択肢を提供することができれば、姓を使い分けるという社会的なコストに加えて、無駄な作業がなくなるという経済的なコストも下がる。導入にはメリットがあると思っている。

──通称と本名を使うことでほかに日常生活に支障はありますか。

公式に認められた名前は、本名である西端だ。だから、日頃からハンコは青野と西端の2つを持ち歩く。それが日々のストレス。どちらでサインし、押印すればよいか、つねに考えている。「そんなのささいなことだ」と言う人もいる。それなら「あなたがこの労力を負担して」と言いたいところだ。

私のような経営者だけでなく一般社員も同様だ。たとえば、保育園に通う子どもが熱を出して、会社に電話があったとする。「西端君のお父さん」と言われ、周りはすぐに対応できるだろうか? 私のように通称も本名も知られている人は少数である。通称と本名を使うことでコストとリスクが生じる。

別姓に賛同する経営者19人が集まった

──選択的夫婦別姓導入の反対派には、子どもの姓をどうするのか、家族制度が崩壊しないか、という声があります。

4月22日には「ビジネスリーダー有志の会」など3団体合同で、「選択的夫婦別姓の法改正要望」を小池百合子東京都知事に渡した(右から4人目が青野社長)(撮影:田中理瑛記者)

現行制度のほうが崩壊している。今の戸籍制度では親子で同じ姓を名乗れない場合、別の戸籍になってしまう。たとえば、夫の姓にした妻が離婚した場合、妻は元の姓に戻るが、子どもが姓を変更したくなければ、今の戸籍制度では別の戸籍になる。これが現在の戸籍制度のほうが崩壊していると思う理由だ。選択的夫婦別姓を導入することによって、同じ戸籍で別の姓を名乗らせることも、可能になるのではないか。

私の祖父の時代は結婚する相手も選べず、長男には職業選択の自由もなかった。そこから社会は進歩したが、姓については昔のままだ。昔の家族のあり方が現代に追い付かなくなってきている。離婚・再婚も当たり前の時代、戸籍制度のアップデートが必要だろう。

これからは、子どもの姓の決め方も、多様になってくる。1人目の子どもは夫の姓、2人目の子どもは妻の姓、という形で選択できてもよいのではないだろうか。

4月1日に「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」という有志の会を発足し、ドワンゴの夏野剛社長とともに私が共同代表になった。企業経営者あわせて19人で、早期実現に向けて活動を進めていく。この取り組みにあたり、周囲の経営者にも呼びかけたところ、驚くほど賛同の声が集まっている。

現行制度の夫婦同姓で困っている人がいるのであれば、その人たちに寄り添った形での変化が必要。政治家の皆さんが立法することで、困っている私たちを助けてほしい、というシンプルな願いだ。

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菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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