PwC グローバル メガトレンド フォーラム
~勝ち残りを賭ける日本企業が、世界のメガトレンドと
直面するグローバルリスクにどう立ち向かうかを考える1日~
グローバル メガトレンド セッション
(A-1)日本企業の海外進出
A to Zを見直す
プライスウォーターハウスクーパースの坂野俊哉氏は、海外戦略の策定に必要なアプローチとして「マーケットアプローチ」、「コンピテンシーアプローチ」、「戦略的意思アプローチ」の三つを挙げ、切り口を特定した資源配分が必要と説く。インド進出の事例では、債権不払いや現地ジョイントベンチャーのパートナー先との紛争や組合問題、ストライキなどのトラブルはインドでは当たり前のことで、トラブルが起きてから対応するのが通例。そこで海外戦略で重要となるのが、「現象→暗黙知→形式知」という思考プロセスであり、多国展開する場合は、グローバルレベルとローカルレベルの2層での戦略の見える化が不可欠と指摘した。
これらを踏まえた上で、日本企業が海外展開にチャレンジしていくには、「抽象化されたコンセプトや概念を、文化を超えて伝えていくコミュニケーション力こそ重要である」と話す。今後の海外戦略のA to Zについては、「ルールが異なるさまざまな国で事業運営の仕組みをどう作るかという次元でのロジックが要となる」ことを強調した。
(A-2)グローバル企業の新世界
~M&Aにおける日本企業の挑戦~
M&Aのクロスボーダー案件を多く手掛ける吉田あかね氏は、「グローバル企業のCEOは技術進歩や人口構造の変化、世界的な経済力のシフトなどのトレンドに対応するために、M&Aは有力な選択肢として認識しており、78%のCEOがM&Aや合弁・共同出資事業あるいは戦略的提携について変革していく必要性を感じている」と分析する。一方、「M&A案件の75%は失敗」に終わっており、日本においても巨額の減損を計上している現実がある。しかし吉田氏は、日本企業はM&Aを通じ、グローバル企業への変革途上にあるとし、買収案件もここ数年増加傾向にあると話す。クロスボーダーM&Aの成功術として「買った果実を腐らせないためには、違いを原動力に自己変革につなげていくことが大事」と断言。
さらに「守・破・離」をキーワードに挙げ、「『守』=成長を長期的な視点で考え、戦略策定によるM&Aが肝であり、『破』=パートナー戦略には、互いの強みの理解と勝つためのシナリオ策定が不可欠。『離』=買収先を熟知し、新たなマーケットへの飛躍につなげることこそが、真のグローバル企業が目指す新世界である」と締めくくった。
(A-3)インフラ輸出から
都市ソリューションの輸出へ
グローバルメガトレンドの一つ“都市化”について野田由美子氏は、2050年には世界人口の75%が都市に居住すると予測される中、新興国が抱える深刻な都市課題の解決という視座に立ってインフラ輸出を推進することが有効と主張した。また、「選ばれる都市」を目指して切磋琢磨する世界の都市間競争の現状を紹介し、シンガポールや仁川など先進事例や、東京の都市力についても説明した。
シンガポールは、「ビジネスのしやすさで圧倒的競争力を誇り、過去50年で住みやすい都市を創りあげた歴史と、水処理技術や交通管理システム、公共住宅・廃棄物処理・ガバナンスの仕組みなどを都市のノウハウとして輸出している」と述べ、日本が有する急速な都市化の経験や公害の克服、防災といった経験をノウハウ化し、世界に発信すべきとした。これにより民間企業の都市インフラ輸出を支援すると共に、世界のベストプラクティスを日本に持ち込み日本の都市の競争力強化に生かすといった、アウトバウンドとインバウンドの政策を両輪で回すことが重要と訴えた。
そのために、日本の多様な都市モデルをショーケース化し、都市のナリッジハブとなる都市ソリューションセンターを創設することを提唱した。