「脳食いアメーバ」少年2人を殺した生物の恐怖 たいていの患者は「感染から5日後」に死亡する
体温は39.8度、心拍数は毎分120に上がっていた。報告によれば「質問に答えることはできず、目を刺すような素振りをしてもまばたきをしなかった。だが脳幹の反射は保たれており、痛みを伴う刺激を与えると、腕と足をひっこめようとした」。
当初、男性には細菌性髄膜炎の抗生物質が投与された。熱は少し下がったが、意識障害は改善しなかった。さらなる検査で、フォーラーネグレリアの感染が明らかになった。報告によればそれは、「生存の記録はまれで、たいていは死に至る」感染症だ。男性は病院搬送から5日後に死亡した。
地元テレビ局のニュース番組に出演したフロリダ州のタナーの両親は、息子は病気になる数日前にノースフロリダのキャンプ場にある湖で泳いだことを明らかにした。少年は吐き気を訴え、嘔吐、頭痛、首のこわばりに苦しんだ。医師は当初、連鎖球菌性咽頭炎と診断した。両親は診断に異議を唱え、息子を別の医療施設に連れて行った。少年は人工呼吸器につながれた。その後、脳を食べるアメーバ、フォーラーネグレリアの感染症と診断された。
「医師はこう言った。『申し訳ありませんが、息子さんは細菌性髄膜炎ではありません。アメーバの感染で、治療法はありません』」と、父親のトラビス・ウォールは番組で語った。
やがてタナーの脳は活動を止め、生命維持装置を外された。
テキサス州ヒューストンに住むジョサイアは9月の初めに病気になり、吐き気と発熱に苦しんだ。母親のマリアによれば、医師は当初、ウイルス感染と考えていたが、のちに脳を食べるアメーバの感染だということがわかった。「息子が助かるチャンスはほとんどなかった。でもなんとか助かってほしかった。でも、仕方がない」と、マリアは地元テレビ局の番組で語った。「とても辛かった」
CDCによると、フォーラーネグレリアの感染は一般的に死亡率が非常に高く、北米で知られている生存者は5人しかいない。
水温上昇で北上か
今年初め、アメリカでフォーラーネグレリアの分布が広がっているという報道があった。CDCの疫学者ジョナサン・ヨーダーは、追跡を開始して最初の数十年は、このアメーバはアメリカ南部でしか発見されなかった、とニュースサイト・インサイダーに語った。「ところが過去10年間で、これまでまったく症例の報告がなかったインディアナ州、ミネソタ州、ミズーリ州のような北部の州でもこのアメーバによる感染症例が特定されている」
「北部の州で水温が上昇を続けるならば、北部でも水に入る場合のリスクが高まるのではないかという懸念がある」
(文:ハナ・オズボーン、翻訳:栗原紀子)
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