さらば渡辺麻友!「まゆゆ」は本当に偉大だった 昭和のアイドルや映画女優のような稀な逸材

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それをやりきった渡辺麻友は逸材であり、極めて優秀な俳優であったと思う。それを象徴する作品は、2012年に放送された「さばドル」(テレビ東京系)。ほんとうは30代の女性が10代のきらっきらのアイドルとしての二重生活を送っているという奇想天外なコメディだ。

ぴっかぴかのアイドル・渡辺麻友が、どんよりしたキャラを演じたときの意外なハマり具合。頬から口元の筋肉を弛緩させると、こうも顔が違って見えるのかという驚きと、そのギャップをさらしてしまう度胸、と同時に、つまり渡辺麻友はつねに顔の筋肉を徹底的にコントロールして完璧なアイドル顔を作っているのだと改めて感心するドラマであった。

写真集『まゆゆ』の表紙に体現した理想の偶像

渡辺麻友が理想の偶像を探求していたことは、2011年に上梓された初めての写真集『まゆゆ』の表紙にも表れていたと感じる。正面を向いて座り、交差した両足で体を隠し、まるで全裸のように見えるあれである。アイドルを表現する芸術作品を完成させたまゆゆの精神性と身体のコントロール術は、俳優として重要な部分である。

「大人になんかなるな」の帯でも話題になった渡辺麻友さんのファースト写真集「まゆゆ」(写真:Amazonの同写真集購入ページより)

2017年、惜しまれつつAKB48を卒業した後は、俳優として活躍の場を広げていくかと思って見ていた。その年放送された「サヨナラ、えなりくん」(テレビ朝日、2017年)では、黒まゆゆ面を発揮。多くの恋愛遍歴を経て婚活に勤しむ、いささかやさぐれた女性を、ときおり顔を意地悪く歪めながら演じていた(それもまた可愛いのだが)。その後「いつかこの雨がやむ日まで」(東海テレビ、2018年)では、家族の罪のせいで日陰の人生を歩まざるをえなくなる役に挑み、キャバクラでバイトするエピソードが、これまでの渡辺麻友の演じてきた役とは違うと注目された。

2018年は、大ヒットした映画をミュージカル化した「アメリ」に堂々、主演。歌って踊って、キスシーンがあるのかないのかも話題になった。清純派から徐々に大人の役へと移行していく意気込みを感じたのと、映像で生々しい演技を披露して俳優として脱皮みたいなことを目指すよりも、舞台、とりわけミュージカルのような夢のある世界でこそ彼女の演技力は生かされるのではないかと私は余計なお世話だが思ったりもした。

次ページ最後のドラマ出演作となった「なつぞら」で見せた真骨頂
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