
オープンスカイの適用で
空港が選ばれる時代に
成田空港は1978年に1本の滑走路と一つのターミナルで運用をスタートした。以来、成田空港は、世界各国と国際航空ネットワークを結び、名実ともに日本の表玄関として国際拠点空港の役割を担ってきた。これまで、同時並行離着陸方式の導入や航空機の駐機場の増設、誘導路の整備などを行い、2013年3月には年間発着容量が27万回にまで拡大している。14年度中にはさらにLCC専用ターミナルビルの整備や駐機場の拡張を進め、30万回に拡大する予定だ。
13年、成田空港は開港35周年を迎えた。さらなる飛躍に向けた節目の年であると同時に、大きな変化を迎えた年でもあった。というのも、13年3月31日の夏ダイヤから、いよいよオープンスカイ(航空の自由化)が成田空港に適用されたのである。オープンスカイとは、航空会社の数や路線、便数などについての二国間の取り決めを相互に撤廃することである。航空会社にとっては、乗り入れ地点、便数を自由に選ぶことができるようになったわけだ。外国航空会社の日本への参入・増便が容易になることで、多様なサービスが生まれ、利用者の利便性の向上が期待できる。ただし、見方を変えれば、空港が航空会社から「選ばれる」時代に突入したと言える。
空港間競争が激化
この変化をチャンスとして挑戦
韓国の仁川空港やシンガポールのチャンギ空港など、アジアの主要空港は著しい成長を遂げ、また国内でも、今年3月末には羽田空港の国際線二次増枠が予定されており、航空需要はさらなる活性化が見込まれているものの、空港間競争はますます激しくなっていくと考えられる。
むろん、成田空港にとって、これらの動向は少なからぬ影響があるに違いないが、成田空港ではこのような変化をチャンスととらえ、積極的な挑戦を始めている。その決意表明とも言えるのが、13年4月に策定された15年度までの3カ年中期経営計画「イノベイティブNarita2015~選ばれる空港を目指して~」だ。「イノベイティブ(革新的な)」および「選ばれる空港を目指して」という計画名に、イノベーションにチャレンジしようとする成田空港の気概が感じられる。
離発着制限の
弾力的運用を開始
3カ年中期経営計画「イノベイティブNarita2015~選ばれる空港を目指して~」では、「安全の徹底追求」、「選ばれる空港づくり」、「経営体力の強化」の三つの基本戦略のもと、具体的な施策の取り組みが始まっている。その内容を見ると、「イノベイティブ」の名に示されるように、前例にない意欲的な挑戦が形になりつつある。
たとえばカーフュー(離着陸制限)の弾力的運用の実施もその一つだ。成田空港では、開港以来、23時から翌朝6時までの時間帯は原則として離着陸が禁止されている。ただし成田空港における台風、大雪等の悪天候の場合や、航空機の安全や乗客の生命に係る場合など、緊急またはやむを得ない場合に限定し、緊急事態として離着陸を認められていた。
LCCの新規参入などが進む中、さらに「選ばれる空港」となるために、成田空港では、カーフューの弾力的運用の実施について空港周辺9市町に提案し、鋭意説明を行った。その結果、国、千葉県、空港周辺9市町および成田空港で構成される「成田空港に関する四者協議会」における合意(13年3月29日)により、やむを得ない理由による遅延に限り23時台の離着陸を可能とするカーフューの弾力的運用が、13年夏ダイヤから始まったのである。この弾力的運用により、成田空港の利便性が向上したことは言うまでもない。
インセンティブ料金制度を導入
ノンストップゲート化も進める
成田空港ではこのほかにも、利便性・快適性の向上に向けた革新的な取り組みを進めている。「ノンストップゲート化」である。
成田空港では、空港へ入場する際にセキュリティチェックの一環として身分証の提示が求められているが、利用者がスムーズに空港を利用できるよう、ノンストップゲート化に向けた検討を進めている。14年度末を目指して、駅ゲートや車両ゲートにおける安全でスムーズな入場を実現するシステム整備が進行中である。
航空会社に対する戦略的な施策も進めている。特に注目すべきは昨年4月から適用されている、着陸料などの料金の見直しだ。まず、国際線着陸料を航空機の種類に応じて平均で5.5%引き下げた。あわせて国際線手荷物取扱施設使用料も単価を引き下げた。同時に、新規乗り入れや増便等に対するインセンティブとして増量割引制度を導入した。具体的には、前年度に対して増便等により増加した着陸料相当分の約50%を割り引くものであり、航空会社にとって、より就航しやすい環境整備を進めている。
国際線も国内線も成田から
これからさらに「選ばれる空港」になるために、成田空港に何が求められているのか。その前提として、成田空港の強みを確認しておきたい。
まずなんと言っても、充実した国際線ネットワークだろう。成田空港から就航する路線は世界101都市と結ばれる。その数もさることながら、北米路線が多いことは特筆すべきだろう。東アジアの中でも最も東に位置する地理的な条件から、就航する航空会社の数が多く、北米とアジアの「結節点」の機能を有している。
世界中に向けて路線網が張り巡らされ、バランスの取れたネットワークを構築している成田空港を、「スカイチーム」、「スターアライアンス」、「ワンワールド」のいわゆる3大アライアンスも、東アジアの拠点空港として位置づけている。
成田空港と言うと国際線のイメージが強いが、実は国内線のネットワークが充実していることも忘れてはならない。現在、成田空港から17路線が日本各地に就航している。特にLCCの就航は成田空港の国内線ネットワーク強化の大きなきっかけの一つだ。12年夏には、ジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパン(現・バニラ・エア)が相次いで成田空港に乗り入れた。両社はその後順次便数を増加。LCCの存在が空の旅をより身近にするとともに、首都圏のゲートウェイとして成田空港を選択する利用者も増えた。
13年10月には、全日空系のLCC、ピーチ・アビエーションが成田―大阪(関西国際空港)間の運航を開始した。14年5月には、中国・上海に本社を置くLCC(春秋航空)を母体とする春秋航空日本が、成田空港を拠点に高松、広島、佐賀の3路線で就航を開始する予定だ。もちろん、成田空港のLCC国内就航便数は日本でトップだ。今後さらなるネットワーク拡充も期待される。「国際線も国内線も成田」という評価がさらに高まりそうだ。
発着回数・旅客数ともに
過去トップクラスの伸びへ
成田空港は、単なる旗印にとどまらず、着実に「選ばれる空港」に向けた施策を進めている。その成果は実際の数字にも示されている。13年(暦年)の国際線・国内線の総発着回数は約22万1000回と過去最高。旅客数は過去2位となっている。中でも、LCCの新規就航や増便などにより、国内線発着回数、国内線旅客数が過去最高になっているのは大きな特徴だ。
成田空港に乗り入れる航空会社数も過去最高の85社となっている。成田空港では、さらなるニーズに応えるために、施設の整備を進めている。LCC拠点化への対応として、現在、第2旅客ターミナルビルの北側で、LCC専用ターミナルビルおよびにエプロンの整備が進行中で、14年度中の完成を予定している。
また、3大アライアンスの拠点化への対応として、航空機の出到着が重なるピーク時間の運用効率化に向けて、駐機場を増設するほか、第1旅客ターミナルビル南ウイングの能力増強として、入国審査場や税関検査場の拡張、手荷物取扱施設の能力増強等を図るとともに、第2旅客ターミナルビルの施設改良として、本館とサテライトの連絡通路の整備等を実施している。また、両ターミナルビルの搭乗施設を増設するなど、使い勝手の良い空港に向けた施設整備が進められている。
ソフト面を拡充し
さらに魅力的な存在へ
ここまで述べてきたようなさまざまな取り組みにより、成田空港における14年度中の発着容量30万回化が着実に近づいている。13年12月には、日本を訪れた外国人旅行者数が初めて年間1000万人を突破し、成田空港で記念セレモニーも開かれた。政府では観光立国の推進を重要な成長戦略とし、20年にはこれを2000万人に増やす目標を掲げている。今後、訪日外国人の拡大が見込まれる中で、日本の空の玄関口として成田空港が果たす役割には、大きな期待が寄せられている。
音声エージェントアプリ「NariCo」をはじめ、ソフト面でも多様な取り組みを進めている
成田空港では外国人旅客を「おもてなし」するサービスの提供にも積極的に取り組んでいる。13年10月~12月には、国際線を乗り継ぐ外国人旅客向けに、専用ラウンジの開設や優待メニューの提供などのプログラムを期間限定で実施。結果を分析し、今後のCS向上の取り組みに生かしていく考えだ。また、多言語化への対応や、無料Wi-Fiサービス、商業施設の拡充などを進め、さらにスマートフォンなどの携帯端末を使った音声エージェントアプリ「NariCo」の提供も開始。ソフト面でも多様な施策を展開している。
世界各国とのバランスの良い豊富な国際航空ネットワークをはじめとする、成田空港の特色を見ていくと、日本という国にとって重要な資産であるとも感じられる。成田空港が、多くの旅客や航空会社から信頼され、魅力あふれる「選ばれる空港」になることが、日本の将来にとっても大切であろう。成田空港の存在意義がますます高まろうとしている。


