「ニトリ」躍進の背景にあった業務改革の全容 IT活用を加速させた「アンバサダー制度」
同社代表取締役社長の五十嵐明生氏は、定例会議で「ホームロジスティクスは『Planner』と『Teams』で業務改革を行っている」と明言。トップが方向性を示したことで、ツール活用がよりいっそう進んだという。
「仕事のやり方をどのように改善していくのかが、企業の生命線です。つねに業務改善を現場で行い、また場所を問わない働き方を社内全体へ広めることは、全国に拠点を持つホームロジスティクスにとって非常に大きな意義があります」(五十嵐氏)
同社CIOの深作康太氏は、社内だけではなく社外へのアプローチも視野に入れている。
「『Office 365』を導入しているお客様も多いので、社内のアンバサダーたちが『Microsoft Power Platform』でのアプリ利用なども理解しながら、お客様へも業務改善提案できる人材に育ってもらいたいと考えています」
ホールディングス全体では現在、「Teams」を含めた「Office 365」の利用率は50%を超えている。ただ、ここに至るまでに反発がなかったわけではない。
ツールの便利さを理解してもらうためにどうすべきか
「ツールの便利さを伝えても、なかなか理解してもらえなかった」と織田氏は振り返る。ツールの機能だけを話しても、ユーザーとの間に距離ができてしまう。そこで織田氏は、身近に感じてもらえるよう、自身の私生活を例に、かみ砕いて説明するよう努めたという。
高校生の子どもからはタブレットでスケジュールが送られてきて、中学生からはわら半紙、夫はアナログなので口頭……。といった具合に、チャネルがばらばらのスケジュール管理の大変さを訴え、同じプラットフォームの「Office 365」で管理できる利便性の高さを強調した。「だんだん理解してくれる人が増えました。まさに私生活を切り売りしてアンバサダーを務めています」と織田氏は言う。
サービスを提供しているマイクロソフトは、デジタルトランスフォーメーションの推進役として「Customer Success Manager(以下、CSM)」という職務を設けて、ユーザー企業を支援している。ニトリホールディングスも、CSMのサポートを受けてツールの定着化に向けた構想を練ったほか、CSMが講師となって、アンバサダー制度を含む社内変革のための体系的な知識と手法をレクチャーするESM(Employee Success Manager)メソッドの学習を行ったという。
「ESMのレクチャーを受けて、『便利なものがあるのだから使わなければ損』と訴えていたアプローチを見直せました。今では、まず自分がどう楽しめているかを前面に出すこと、そして、『使わないリスク』というものをきちんと提示する手法に切り替えています」(織田氏)