「ひとり情シス」の新たなトレンド デジタル時代の情報システム部門の実情
入社後のアンマッチを防ぐために必要なこと
悲観的なニュースばかりではない。外部からの転職者が退職者数を上回っているのも最近の傾向だという。同社の調査によると、中堅企業の情シス要員の約21%が退職している一方で、約37%の人材が外部から転職してきている。
顧客にシステムを提案する立場にあるITベンダーの社員の中にも、ユーザー企業に入社して、思う存分ITを活用し、経営に貢献したいと考える人材が多く存在するという。
「ユーザー企業でひとり情シスを目指す方の多くは、社会に出て20年程度経験を積み、サーバーやネットワーク、プログラミングなど、あらゆるスキルをバランスよく習得しています。企業が必要としているITスキルと合致した人材を採用できた場合、劇的にIT環境が向上し、デジタル化が進むことがあります」
スキルを持った情シス候補者を採用できるのは喜ばしい話であるが、入社後にアンマッチが生じるケースは少なくない。技術レベルが高い情シス担当者は、つねに最新の技術や大がかりなプロジェクトを望む傾向にあるからだ。
「情シス担当者の希望に対して、中堅企業では大規模なプロジェクトが連続することはなく、プロジェクトが終息すると、メンテナンスモードになることがあります。そのような場合、技術志向のひとり情シスは物足りなくなってしまい、売り手市場だということもあって、新しい仕事を目指して退社してしまうケースがあるのです」
ひとり情シスを切望している企業は、特別な給与条件などを提示したうえで、CIO(最高情報責任者)に近い役割を期待している。一方、キャリアアップを望んでいる潜在的な転職人材も多い。そのような意味では、両者の思惑は一致しているのだが、プロジェクト終了後のことも検討しておかなければ、雑用的な仕事を提供するだけになってしまう。
「20年ほどの経験を積んでひとり情シスの職を望んでいるので、デジタル化やデータを活用して経営層に近いポジションでキャリアアップしていくことを次のステップとする方も多いです」
同社の調査によると、経営幹部を目指したキャリアパスに進めるひとり情シスは増加しているという。ITの技術動向だけではなく、経営参画するキャリアを志向しているかどうかの確認をしておくだけでも、入社後のトラブルは減らせるだろう。