「ひとり情シス」の新たなトレンド デジタル時代の情報システム部門の実情
IT投資動向調査から見る情報システム部門の変化
ITハードウェア製造大手のデルが2019年2月に発表した「中堅企業IT投資動向調査」(調査期間:18年12月~19年1月、対象:従業員100名以上1000名未満の中堅企業約800社)によると、情報システム(以下、情シス)担当者が1人以下の中堅企業は、総務部門などによる兼任型を含むと約38%と、昨年より7ポイント上昇している。同社によると、従業員500人以上の企業でも、情シス担当者が数人というひとり情シスに近い状態で、多くの仕事をサポートしなければならないケースも少なくないという。
同社執行役員の清水博氏は次のように語る。
「以前よりは情シス担当者へ理解のある経営層の方が増えていて、経営層に近い参謀的なポジションで活躍する情シス担当者も増えてきています。ただ、価値を見いだしてもらえない場合も多く、ひとり情シスの葛藤は続いています」
19年に入り、ひとり情シスを取り巻く環境は、いっそう変化しているという。戦後最長級の好景気は、各方面で人材不足を引き起こしている。厚生労働省によると、18年の平均有効求人倍率は、前年を0.11ポイント上回る1.61倍と、第1次オイルショックが起きた1973年の1.76倍に迫る高水準である。
こうした状況の中、とくにニーズが高いIT系人材が、転職市場で注目されているという。
「ひとり情シスが人材紹介会社に午前9時に登録すると、午後1時にはオファーが届くといわれるほど、必要としている企業は多いです。また、人材不足の中、1人ですべての責任を負わなければならないことや、正当に評価されていないことなどから、外部に機会を求めて転職する人は少なくありません。休日にも仕事をしなければならないうえ、代休も取りにくい職場環境も一因だと考えられます。ある企業で、コツコツと内製で社内システムを構築しているひとり情シスが退職することになり、その後の運用も必要なので、同様のシステム開発をITベンダーに依頼したところ、数億円の見積もりをされたという話もあります。まずコミュニケーションを取る機会を増やして、ひとり情シスの環境や評価を見直すことをお願いしたいです」