テイラー・スウィフトが「Appleに勝利」した戦略 「感情ツール」がアイデアや芸術作品を広める
ハーモニー・コリンが監督したこのギャングたちのドタバタ劇のマーケティング戦略を考えたのは私の会社「ジオーディエンス」で、その正統的でない手法は大きな成功を収めた。
ゴメスの魅惑的な自己ブランド化を助長した1つの要因は、不良少年ふうのポップスター、ジャスティン・ビーバーと彼女が以前、恋愛関係を噂されていたことだ。ジャスティン・ビーバーはツイッターでナンバーワンのケイティ・ペリーに次ぐフォロワー数を誇り、インスタグラムのアカウントでは第5位という人物だ。
だが、単に性的な魅力や仲良しのセレブ同士で群れていることだけが、売れる要因ではない。テイラー・スウィフトの巧妙なファン・マネジメントおよびネットワーク・メンテナンスの戦略には、もっとはるかに人間的な手触りが使われている。
ビル・クリントンの親しみやすい性格が、政治的ネットワークを築く優れた技術として役立ったのと同じように、25歳のスウィフトは、人間的なジェスチャーがどれだけ多くの影響力をもたらすかを実地で示した。
ソフトな手触りの小さな行為が「幻想」をつくる
スウィフトは#ShakeitOffJaleneというハッシュタグによって、ジャリーン・サリナスという末期の脳腫瘍に侵された4歳の少女の最後の願いが、スウィフトと一緒に「Shake It Off」を踊ることだと知った。スウィフトはジャリーンとその母親にビデオ電話をし、テレビカメラがその感動的な場面を映像にした。
別のときには、白血病と闘っているナオミ・オークスという11歳の少女に5万ドルの寄付を行った。4歳の娘を癌で亡くしたという母親に、コンサートのとき涙ぐみながらエールを送り、自分の母親も同じ病と闘っている事実を明かしたこともあった。
スウィフトの慈善的なジェスチャーは計画的で、利己的なものであるかもしれない。だが、たとえそうであっても、その巨大で国際的なスケールのファン・マネジメントとフォロワー・マネジメントには感服せざるをえない。傑出した才能がなくては、7500万人に語りかけているのに、その一人ひとりに「個人的に語りかけられている」という感覚を抱かせることは不可能だ。
そうした幻想をつくりあげるためには、ソフトな手触りの小さな行為が必要になる。それによってテイラー・スウィフトのファンは、彼女と深く結び付いているという気持ちを抱くようになる。
それは、「リアーナ・ネイビー」の信者が自分たちのアイドルであるリアーナとの間に感じる結び付きよりもはるかに強い。それはリアーナの(おもにインスタグラムによる)ソーシャル・イメージが、ファンとの個人的な結び付きよりも、セクシーでグラマラスなアピールに依拠しているからだ。
スウィフトが才能に恵まれた精力的なパフォーマーであることは明らかだ。だが、残りの部分─―つまり、彼女がソーシャルメディアで示している、親しみやすくて心が広くて、どこから見てもいい人間というイメージ─―もまた重要なのだ。
2つの要素は合体して同じ1つのパッケージになっている。それらはともに、コミュニケーションのネットワークが感情によって支配されるこの新しい時代において、名声というメカニックがどのように作用するかを表している。ソーシャルメディアがホロニックな構造をもち、その中でネットワークを構成する個々のメンバーが潜在的視聴者であると同時に配信システムでもある以上、感情は今や、アイデアや芸術的な作品を広める第1のツールなのだ。
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