「知の集積」が都市発展を加速する
つくばエリアの実力
通勤はモビリティロボットに乗って
つくばエクスプレス(TX)の研究学園駅周辺に行くと、他ではまずみられない光景に出合うことがある。つくば市役所職員などが立ち乗り型のモビリティロボット「ウィングレット」に乗って通勤している姿だ。つくば市内では、「セグウェイ」に乗って防犯パトロールを行う光景を見ることもある。
つくばエリアには、産業技術総合研究所や宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立環境研究所などの研究所が数多く立地している。国などの研究機関の約3分の1がこのエリアにある。それらの研究機関で先端的な研究に取組む研究者の数は約2万人。そのうち博士号取得者は約8000人に上る。
そうした“知の集積”を活用してイノベーションを創出するため2011年に政府から指定されたのが「つくば国際戦略総合特区」だ。現在、この特区では次世代がん治療や藻類バイオマスエネルギー、核医学検査薬などの開発を目指す七つのプロジェクトが進行している。「ウィングレット」による通勤や「セグウェイ」でのパトロールは、生活支援ロボットの実用化を目指すプロジェクトの実証実験として行われているものだ。
筑波研究学園都市は1963年の閣議了解により建設が進められ、昨年50周年を迎えたところ。今や世界でも有数の学術・研究都市として知られている。
もちろん、この学術・研究都市を支えているのは研究機関だけではない。“知の集積”に引き寄せられるかのように、企業も集まってきている。たとえば半導体大手のインテルは、東京本社とは別につくば本社も構えている。「ロボットスーツHAL®」で一躍有名になったサイバーダインの本社もつくば市内だ。個人被ばく線量測定システムや測定サービス大手の長瀬ランダウアは2009年に日本橋から本社ごとつくばに移転してきた。理想科学工業は昨年の5月、茨城県内4か所に分散していた開発拠点を集約し、研究学園駅の目の前に新開発拠点を開設した。そしてこれらの企業の多くは、つくばにある研究機関との連携や情報交換を通じながら事業を進めている。筑波大学も産学連携や共同研究に前向きだ。