ピエール瀧が「多額の賠償金」払うのは本当か? 注目すべき点はタレントの「イメージ条項」

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出演中の作品は撮影し直す費用や、お蔵入りになった作品の制作費用など、高額な損害賠償が発生するケースも考えられるが、タレント個人はどこまで負担する必要がある?

「通常は、タレント個人は直接の契約関係にはありません。テレビ局側や制作会社と契約を結ぶのは所属事務所ですから、賠償義務の負担も、たいていは所属事務所になります。タレント個人は何も負担する必要がないのかという疑問がわきそうですが、これには、所属事務所が『求償』という形式で、負担を求めることになりますね」

金額は「個々の判断」で決まる

では、損害賠償請求の金額はどう決まる?

「実際に、商業制作物のほか、映画やテレビドラマ、楽曲その他の著作制作物に関して、他方で、外部の関係者独自の自粛ムードがあるとすれば、法律的にみれば、お蔵入りイコール、所属事務所に対する賠償請求や、タレント本人への求償請求として、責任が認容されるかどうかについては、別の検討を要します。

つまり、事犯の内容、制作物の趣旨、本人の関与や対価の程度、発表の時期、廃盤やお蔵入りにするべき必要性、ほかの手段の有無、そういった事柄を総合的に判断して、自粛したことによる損害との相当因果関係が認められるかどうかです。

例えば、タレント自身が大きくクローズアップされるような、ブロマイドやポスター、出版物の表紙、特集といったものや、タレントのイメージに直結した制作物、企業や商品のイメージ広告といったものがあります。

これらは、イメージ条項の違反による損害賠償等を観念しやすいと言えます。

しかし、ドラマや映画などは、コンテンツや作品の中身が売り物であり、劇中や楽曲中等における、タレントの関与の程度や立ち位置によっては、主演から端役までさまざまなケースがありえます。それらをすべて一律に、どうこうする基準のようなものは、画一的に定めることはできず、個々の判断によって決定されることが一般的と言えます」

では、どこまでタレント本人に賠償責任があるのだろうか?

「期間に着目すれば、イメージ条項といった契約上の制限条項も、通常は、契約期間などによって、一定の期間が定められており、また対価(本人が受け取っていた報酬)と制限条項との関連性も勘案する必要がありますので、過去にさかのぼってすべてを廃盤にするとか、そのような自主的措置を版元がしたとしても、それに伴う損害のすべてを事務所やタレント本人に転嫁させることは、当該期間や対価性との関連で、難しい場合もあると思います」

太田純(おおた じゅん)/弁護士/訴訟事件多数(著作権、知的財産権、労働、名誉毀損、医療事件等)。その他、数々のアーティストの全国ツアーに同行し、法的支援や反社会的勢力の排除に関与している。
事務所名:太田純法律事務所(HP)

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