研究開発力で挑む革新的新薬の創製 世界に挑む創業300年企業の戦略

経営資源を集中し革新的な新薬を生み出す
新薬の開発には多大な時間と費用がかかる。候補物質の探索に始まり、有効性と安全性を確かめる研究・臨床試験を経て、発売にまでたどり着く確率はわずか2万5000分の1ともいわれる。開発期間も長期にわたるなど、新薬開発はますます難しさを増している。その一方で、国内では薬価の引き下げやジェネリック医薬品への切り替えなど医療費抑制政策が進められ、医薬品業界になかなか明るい光は見えてこない。そうした中にあって、小野薬品工業は、新薬開発に特化する経営方針を貫き、革新的な医薬品を世に送り出すことで成長し続けている。

相良 暁
「業界を取り巻く環境は厳しいですが、あらゆる状況に柔軟かつ迅速に対応し、イノベーションを創出することで、当社にはまだまだ成長の余地があると考えています」と語るのは、相良 暁代表取締役社長だ。その言葉にたがわず、同社は主力のがん免疫療法薬について、非小細胞肺がん、頭頸部がん、胃がんなどに加え、2018年度にも悪性胸膜中皮腫、悪性黒色腫の術後補助療法、腎細胞がん一次治療の承認を取得したほか、十数種類のがん腫についても、適応追加に向けて臨床試験を実施している。また同年度には、パーキンソン病治療薬など新たな3つの化合物の承認申請を行うなど、歩調を緩めることなく新薬開発に取り組んでいる。
こうした同社の創薬力を支えているのが、独自の創薬手法「化合物オリエント」だ。同社は1960年代に「プロスタグランジン」と呼ばれる生理活性脂質の全化学合成に成功。その過程で豊富に蓄積された化合物ライブラリーを有効活用し、ユニークな薬理作用を有する化合物を疾患治療に応用する独自の創薬手法を確立した。これが現在も、独創的で画期的な新薬創製の源泉になっている。