岡山県奈義町が創った「新しい仕事の形」

「地方は働く場所がない」という不安を解消

昨今、地方への移住者が増えている一方で、地方移住の阻害要因といえば「働き口がないのではないか?」という不安が挙げられるだろう。岡山県にある人口約6000人のまち・奈義町で、そういった認識は誤ったものだとして、面白い挑戦が行われている。その取り組みとは「まちの人事部」という組織を運営し、官民連携で「新しい働き方」を推進する、というものだ。「まちの人事部」に携わる4人の座談会を通して、「新しい働き方」で、まちをどのように活性化しているのか、そのヒントを探った。

企業に属さない「新しい働き方」

まちの人事部部長
株式会社はたらこらぼ
代表取締役
日下 章子氏

日下 「まちの人事部」は、地方創生の一環として岡山県奈義町が人口減少に歯止めをかけるために、「ひとづくり」と「しごとづくり」をサポートする目的で2017年4月にスタートしました。奈義町から委託を受けた地域再生推進法人のナギカラを中心に、人材コンサルティングを手がける当社「はたらこらぼ」と町民の運営スタッフとで、休業中のガソリンスタンドをリノベーションした「しごとスタンド」を拠点に活動しています。メインとなる事業は、町民の「ちょっとだけ働きたい」と地元企業の「人手が足りない」をつなげるワークシェアリング事業です。

井上 「しごとコンビニ」は、主にお年寄りや子育て中のお母さんたちからの「少しの時間だけ働きたい」という声に応えるためにできました。企業に属さずに空いた時間、都合のいい時間で働く新たな選択肢を提供し、同時に地元企業の人材不足も解決するシステムです。

まちの人事部副部長
株式会社はたらこらぼ
井上 翔平氏

日下 「しごとコンビニ」ができた当初は、ひとつの仕事を1人にお願いするという形をとっていました。しかし、時間やスキル、業務実施への不安などにより、自信を持って仕事ができないという人が出てきました。そのため、時間や業務を分解しチームで働けるようにし、より多くの人が安心して業務が行える体制をつくりました。

井上 その後しばらくは、こちらから仕事を選ぶことはせず、ご依頼いただいたものを受けていた状態でした。すると、今度は「仕事はあるが、やりたい仕事がない」という声が上がってきたため、皆さんのやりたい仕事ができる体制を整えようと、皆さんのやりたいこと、好きなことをもとに仕事を創出する方針を新たに打ち出したのです。

まちの人事部次期部長
山本 容子氏

日下 例えば、文章を書くことが好きな人に対しては、座学とOJTで学べるライター講座を実施し、未経験でも自信を持って仕事に挑戦できる環境も整えています。修了後は、インタビュー記事やSNSの投稿原稿の作成などの仕事をお願いしています。

井上 仕事の幅を広げるために「こんな仕事ができる」と町内外の企業にこちらから営業をかけることもあります。例えば、「企業サポーターズ」と称して、消費者感覚を生かした新商品開発や売り場づくり、モニター調査なども行っています。実際に県内企業から発注を受け、ギフト内容の検討、写真撮影、チラシ作成を担当したケースも出ています。ただ、対企業のお仕事をやった経験のない登録者もいるため、仕事を実施する前に、必要な専門知識の研修をしたり、仕事の質などに関するアドバイスを行ったりし、皆さんの「頑張りたい」という気持ちを応援できるようサポートしています。

一般社団法人ナギカラ
(奈義町指定地域再生推進法人)
代表理事
一井 暁子氏

一井 こうした取り組みは、全国の自治体の中でも珍しい試みだと思います。「しごとコンビニ」のポイントは、仕事を創り出すとともに、皆さんが何をやりたいのか、一人ひとりの生き方や働き方の希望に視点を置いていることだといえます。

井上 「しごとコンビニ」の登録者は145名(2018年12月末)で、高齢者と主婦の方々が中心となっています。登録者とは定期的に面談を行い、登録者のカルテを作成し、それをもとに研修内容を個々にカスタマイズしています。

「しごとスタンド」は、岡山県奈義町のガソリンスタンドをリノベーションした施設。お子さんを持つ母親が仕事をしている間、スタッフが子どもを見ることもある
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奈義町まちづくり戦略室
  • 岡山県勝田郡奈義町豊沢306-1
  • 0868-36-4126
一般社団法人ナギカラ
(奈義町指定地域再生推進法人)
  • 奈義町豊沢299-11
  • 0868-20-1661