「CX戦略」強化における経営の役割 CXフォーラム2018

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特別講演III
Peach流“逆張り”の顧客体験価値改善プロジェクト
~「足し算」ではなく「引き算」で考える顧客満足度~

Peach Aviation
取締役副社長 兼 COO
森 健明

航空会社のPeachの森健明氏は、海外勢参入で競争が激化する市場の中で「コストをかけずに顧客不満足を解消し、低運賃を維持しながら、顧客離反を防いで繰り返し利用してもらう」CX施策を話した。同社は12年の運航開始当初から、安全と定時の運航に注力してきたが、手荷物ルールが顧客に伝わっていないなど、サービス面の課題があった。調査で、顧客の不満が「最大20%の顧客離反につながる可能性」が示されたのを受け、17年に部門横断で「顧客不満足解消プロジェクト」を発足。つながりにくいコールセンターのクレーム受け付け余地不足をカバーするため、ウェブサイトの充実、チャットボット導入を推進。社内向けに、グッドマン氏を招いた講演会開催や、顧客の声などを紹介する「顧客不満足解消通信」を発行してカルチャー醸成に努めてきた。森氏は「『ちゃんと飛ぶ』を第一にアジアのリーディングLCCを目指す」と力を込めた。

ディスカッション
「CX戦略」強化における経営の役割とは?

ディスカッションでは、CXをいかに推進するか、その目的、KPIについて特別講演の3氏に聞いた。

マツダの村上氏は「CX推進に重要なのは意識改革」と強調。顧客と向きあう価値観の定着には「結果よりも従業員の行動を評価するマネジメント変革」が必要とした。CXの目的は、リテンションビジネスで成長して「グループ全員を幸せにすること」。KPI管理は「数字が目的化してしまう」事態への注意を促した。

アコムの木下氏は、CXに限らず、新たな取り組みで重要なのは「人を巻き込む力」と指摘。より多くの人に当事者意識を持ってかかわってもらうことが重要という考えを語った。KPIについては、痛点を感じる人を減らし、コンタクトセンターへの問い合わせ率と、オペレーターの応対力の向上を目指すとした。

Peachの森氏は「顧客を流出させ、リピーターを獲得できなくなれば、将来はない」と、CXの目的は経営課題そのものとの認識を示し、不満解消と運航品質向上で増えた利益は「従業員にボーナスで還元する」仕組みに触れた。KPIは、コールセンターの応答率や定時運航率などの結果指標を見ているとした。

最後にラーニングイットの畑中氏は、この日の講演を振り返り「顧客の不満に気づくだけでなく、仮説を立てて改善策を実践すべきということが共通のメッセージだったと思います」とまとめた。