「CX戦略」強化における経営の役割 CXフォーラム2018
講演I
CX戦略の最新動向
CX戦略を実現する6つの要諦
野村総研の田中達雄氏は、顧客満足とは、良い・悪いが基準の合理的価値と、好き・嫌いが基準の感情的価値に大別でき「CXの向上には感情的価値を満たす必要がある」と述べた。顧客の事前期待はそれぞれ異なるため、画一的な対応では不満を持つ顧客が出てしまう。そこで、顧客ごとに対応するには社員への「エンパワーメント」(権限委譲)がカギになるが、「どんな対応でも許されるわけではなく、上司・部下・同僚による360度評価を並行して行う会社が多い」とした。また、顧客の声を受けてサービスを改善する「クローズドループ」。「トップマネジメント」のコミットメント。顧客をよく観察し、その思考を分析、それを基に計画、実践する「STPD」のサイクルによる潜在的なニーズに踏み込んだ製品・サービス化。「カスタマージャーニー」に合わせたサービスづくり。これらを迅速に行う「アジャイルCX」の6点を、CX成功企業に共通のポイントとして挙げた。
講演II
最新のCXテクノロジーで実現する
近未来サービスのカタチ
顧客を中心に見据えて、一歩進んだサービスを!
セールスフォース・ドットコムの大森浩生氏は2018年9月に開催された同社のイベント「ドリームフォース」で報告された内容を中心に、CX関連テクノロジーの動向を説明した。CX向上には、購入前はマーケティング、購入時は営業、購入後はカスタマーセンターと、サイロ化された組織が別々に対応するのではなく「一連のカスタマージャーニーを実現する組織にして、再購入に結びつけることが重要という指摘があった」と述べた。顧客情報は、さまざまなシステムに点在しているので、まず、これらを統合するプラットフォームで、データを収集、活用できる仕組みを構築して、顧客接点の従業員が働きやすい環境を整え、「顧客中心にサービスを提供する方向に企業文化を変えていく改革が必要」と訴えた。また、同社の提供するチャットボットや音声チャット機能のデモも披露。「デジタルで接客するテクノロジーは急速に進化している」と、最新のテクノロジーへの対応が容易なプラットフォームの重要性を呼びかけた。
講演III
企業変革を牽引するCX時代の
カスタマーサービス実現のポイント
コンタクトセンター運営など顧客接点のアウトソーシングサービスなどを展開する、りらいあコミュニケーションズの小長谷渉氏は、商品の機能的価値から情緒的価値重視へ転換するCX戦略を紹介した。「オペレーターの応対評価スコアと顧客ロイヤリティ影響度は相関がない。相づちや復唱ができても、情緒的価値は生まれない」として、サービスで提供する価値を実行者に浸透させることを訴えた。また「デジタルチャネルに比べ、旧来型チャネルのほうが信頼度が高い」という調査結果から、コールセンターなどのリアルチャネルの重要性を強調。チャットボットなどデジタルで顧客と交流して情緒的価値を生むことはハードルが高く「外資系企業は、顧客からの電話を増やすことに関心を高めている」と述べ、リアル・デジタルもともとの良さをカスタマージャーニー上で生かすことを説いた。一方、パーソナライゼーションについては、リアルチャネルで実現するのは難しいが、まずは、マニュアルによって画一化されたサービス提供をやめるところから取り組むことを勧めた。